思想

フリッチョフ・シュオン動画2

ネイティヴ・アメリカンについてのインタビューもアップされていたので、紹介。

イスラームの深奥――Frithjof Schuon"Understanding Islam"★★★★★

タイトルから「入門書」的なものを想像するひともいるだろうが、実際には非常に難解な書だと思う。イスラームについてある程度知っていて、なおかつフリッチョフ・シュオンの諸著作に親しんだことがなければ、読み通すのはつらいだろう。 Harry Oldmeadowが…

フリッチョフ・シュオン動画

「Logic and Metaphysics」更新。 http://schuon.at.webry.info/201004/article_2.html まだ研究途上だが、フリッチョフ・シュオンの文章を紹介しはじめることにした。随時短めの論文を翻訳していく予定。 以前紹介した動画がYouTubeにアップされていたので…

日本語で読める最良のエゾテリスム入門書――リュック・ブノワ『秘儀伝授―エゾテリスムの世界』★★★★

純粋形而上学としてのエゾテリスムについて、ルネ・ゲノンの用語系にたよりつつ簡素かつ適切にまとめた、良質の入門書。この本に通底する諸宗教に共通する聖なる原理という考えは、まさにゲノンにはじまる永遠学派の思想であり、彼らの著作を読む際の前提と…

ボーン・グノーシスト(生粋の真智者)フリッチョフ・シュオンの傑作――Frithjof Schuon"Spiritual Perspectives and Human Facts: A New Translation with Selected Letters"★★★★★

純粋形而上学は難解である。万人向けではないからだ。しかし、分かる人には即座に分かる。たとえば、「世界は幻想、ブラフマンこそが現実。汝がそれなり」と聞いて、ぴんとくる人なら、この断片的・直観的に書かれた本書は、フリッチョフ・シュオン著作中、…

二十世紀黙示録――Rene Guenon"The Reign of Quantity & the Signs of the Times"★★★★★

処女作『ヒンドゥー教研究序説』以来、伝統原理から逸脱したものとして、西洋近代への批判をつづけてきたルネ・ゲノンだが、この著はそうした批判の集大成である。 『現代世界の危機』で提示された西洋社会の近代主義的諸潮流の諸分析をさらに深め、高度な形…

中沢新一によるイスラームへのラブ・レター――中沢新一『緑の資本論』★★★

学問的厳密さにおいて、いささか疑わしいところがあったとしても、新しい思考を触発し、読み物として面白い本を書く物書きもいるもので、中沢新一はその中の一人であろう。 最後に収録された論文をのぞいて、九・一一の直後にひらめいた直感(天啓)から書か…

ルネ・ゲノン伝記――Paul Chacornac"The Simple Life of Rene Guenon"★★★★★

「伝統研究」誌の発行人であり、長年ルネ・ゲノンと近しい関係にあった人物による、最も初期に出版されたゲノンの伝記であり、後の伝記の底本となっている。ゲノンファンにとって、なくてはならない一冊。 著者自身オカルト・シーンに詳しく、ゲノンとオカル…

ルネ・ゲノンと私

最近すっかりゲノ中となった私だが、かつては、名前だけは知っていたが著書を読んだことはなかった。むしろ避けていたと言ってもいい。やはり、「オカルト系」の人、と思っていたからだろう。 フリッチョフ・シュオンを読み始めてからも、シュオンの師がゲノ…

ルネ・ゲノン『ヒンドゥー教研究序説』(要約;Wikipediaより)

Logic and Metaphysics新記事 http://schuon.at.webry.info/201001/article_2.html Wikiに純粋形而上学に関する著作のサマリーがあるので、それを紹介。

スピリチュアル・ブームを内側から破壊する爆弾ルネ・ゲノン――ルネ・ゲノン『世界の王』★★★★

「アガルタ王国」というオカルト的題材によりながら、世界の伝統宗教が共有する「世界の王」という象徴を深く読み解いたルネ・ゲノンの著作の邦訳。 この著のきっかけになった、オッセンドフスキー『獣、人間、神々』というアジア旅行記のさらに元ネタである…

保守主義すら軽く乗り越える伝統主義者ルネ・ゲノン流階級闘争史観――Rene Guenon"Spiritual Authority and Temporal Power" ★★★★★

形而上学的・精神的領域に関わる教権と形而下的・物質的領域に関わる世俗権は、原初においては一つであったが、歴史が進むとともに分化していった。しかし、分化したとは言え、両者は一体であり、また、前者が後者に優越するというヒエラルキーがはっきりし…

エリアーデのゲノン評

John Herlihy ed."The Essential Rene Guenon: Metaphysics, Tradition, and the Crisis of Modernity"からもエリアーデのゲノン評(『神智学協会:ある擬似宗教の歴史』『心霊主義の誤り』に対する)を。 いわゆるオカルト・グループすべてへの、最も詳細で…

ゲノンの生涯と著作、ただし入門書としては使えない――Robin E. Waterfield"Rene Guenon and the Future of the West: The Life and Writings of a 20Th-Century Metaphysician"★★

前半1部がゲノンの生涯、後半2部がゲノンの思想と、構成自体はスタンダードなもの。1部の生涯については問題ないと思うが、2部の思想の紹介はどうだろう。ゲノンの著作からより、トラディショナリスト・スクールとは無関係な他の著作家たちからの引用・…

ルネ・ゲノンの生涯(Wikipediaより)

「Logic and Metaphysics」新記事 http://schuon.at.webry.info/201001/article_1.html 久々に更新してみた。

徹底的な反近代思想家ルネ・ゲノンの代表作――ルネ・ゲノン『世界の終末――現代世界の危機』★★★★

訳者田中義広が「解説」で述べている通り、ゲノンの思想の基本的骨格はこの本にほぼ言いつくされている。また、非常に読みやすく訳されており、ゲノンを読む際に障碍になりうる基本用語も丁寧に解説している。それゆえ、最初に読むに最も適当な本であると言…

『世界の王』レビューのつづき

1月12日記事『世界の王』レビューで、ゲノンはハードSFとしても読める、と書いた。 http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/20100112 たまたまRobin Waterfield"RENE GUENON and the Future of the West"を読んでいたら、エリアーデの次のような発言に出会っ…

「世界の王」という象徴をめぐって――Rene Guenon"The King of the World"★★★

「アガルタ王国」というオカルト的題材によりながら、いつものゲノン節で、世界の伝統宗教に共通して見られる「世界の王」という象徴の深い意義を探求している。まさにオカルトに精通した象徴学者ルネ・ゲノンの真骨頂と言ったところであろうか。 内容が内容…

20世紀の形而上学者による近代文明批判の古典――Rene Guenon"The Crisis of the Modern World"★★★★

第一次世界大戦の終了直後、「世界の終わり」を感じさせざるをない時代状況の中上梓された本書は、「個人主義」「進歩主義」「物質主義」など、様々な意匠で現れている近代=西洋文明思想を、この世界を超えた原理の否定として性格づけ、多角的な批判的検討…

宗教形而上学原論―― Frithjof Schuon "Survey of Metaphysics and Esoterism"★★★★★

シュオンの思考においては、諸宗教において「理性」と「信仰」の間に線が引かれる所を、むしろ「信仰」(faith)と「叡智」(gnosis)の間に線が引かれる。いわゆる諸宗教の、exotericな面とesotericな面との間にである。 信仰の世界において、少なくとも見…

世界は妄想である

「世界はマーヤーである」とは、ヒンドゥー教の根本思想である。マーヤー(maya)とは、「幻影(illusion)」「見せかけ(appearance)」等を意味する。表題は、リチャード・ドーキンス『神は妄想である』をもじってみた。もちろん、両者は真反対の主張であ…

二十一世紀の新たな伝統(改)――Frithjof Schuon"The Transcendent Unity of Religions" ★★★★★

改めてAmazon Review用に書き下ろしてみた。 『諸宗教の超越的一致』は、比較宗教学者フリッチョフ・シュオンの処女作にして代表作である。その主張は、簡単にかみくだいて言えば、すべての宗教には「外面」と「内面」があり、外面においては違いはあれど、…

こんな本がありました。

『デリダと否定神学』とかは知ってたが。高いので、買うのはペーパーバック出てからだな。 Sufism and Deconstruction: A Comparative Study of Derrida and Ibn 'Arabi (Routledge Studies in Religion)

Anti-Nietzsche Introduction

昔からニーチェが嫌いだった。厳密に言えば「ニーチェが好き」とか言ってるやつらが嫌いだった。(笑 それは冗談としても、ニーチェのキリスト教(西洋形而上学)批判、腑に落ちたためしがない。もちろんこれは、私がキリスト教(特にカトリック)シンパだっ…

革命思想としての神秘主義

神秘主義は一般に現実逃避と思われている。人里離れた場所で、静かに瞑想して過ごすというイメージだ。しかし、私ははやくから「神秘主義こそ真のリアリズム」という命題を信じていた。哲学史上では、イデアリズム(理想主義)とリアリズム(現実主義)は対…

革命右翼宣言

以前保守派の看板は下ろしたが、最近「戦前は右翼こそが革命派」と述べる宮台真司に「感染」(笑)しつつあるので、とりあえず旗幟だけでも鮮明にしておく。そもそも名前が「一輝」だしな。宮台の主張する「重武装して対米依存率を下げる」という戦略も、大…

知的神秘主義の世界への誘い――井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』★★★★★

タイトルは「イスラーム哲学の原像」ではあるが、実際には十三世紀に勃興しはじめた、イスラーム神秘主義哲学(イスファーン)、しかもイブン・アラビーという一人の思想家に焦点を当て、その思想の内でも「存在一性論」に特化して論じている。とはいえ、広…

『サイファ〜』余談

昨日のレビューでは紙幅の都合で(笑)取り上げなかったが、宮台がローマ教皇ヨハネ・パウロ二世の発言に触れている所がある。 ローマ教皇のヨハネ・パウロⅡ世が、二〇〇〇年一月の聖地巡礼ならびに二千年紀を祝す三月のミサで、歴史上画期的な二つのことを…

勝手に覚醒しろ!――宮台真司 速水由紀子『サイファ覚醒せよ!―世界の新解読バイブル』★★

面白い本ではある。が、トンデモ本スレスレなのがどうしたもんか。 家族、社会、自己(アイデンティティ)を超えた第四の帰属先、それを指し示すキイワードが「サイファ」。社会に回収されない「端的なもの」「世界の根源的非規定性」を指示している。おおざ…

純粋まっすぐミヤダイ君――宮台真司『日本の難点』★★★★★

社会は恣意的な構築物に過ぎない。これに対して、似て非なる二つの立場がある。すなわち「境界性の恣意性」を問題にする側と「コミットメントの恣意性」を問題にする側。前者はポストモダン思想によって人口に膾炙した。日本人であることは自明ではない、男…