2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

二十世紀黙示録――Rene Guenon"The Reign of Quantity & the Signs of the Times"★★★★★

処女作『ヒンドゥー教研究序説』以来、伝統原理から逸脱したものとして、西洋近代への批判をつづけてきたルネ・ゲノンだが、この著はそうした批判の集大成である。 『現代世界の危機』で提示された西洋社会の近代主義的諸潮流の諸分析をさらに深め、高度な形…

中沢新一によるイスラームへのラブ・レター――中沢新一『緑の資本論』★★★

学問的厳密さにおいて、いささか疑わしいところがあったとしても、新しい思考を触発し、読み物として面白い本を書く物書きもいるもので、中沢新一はその中の一人であろう。 最後に収録された論文をのぞいて、九・一一の直後にひらめいた直感(天啓)から書か…

ルネ・ゲノン伝記――Paul Chacornac"The Simple Life of Rene Guenon"★★★★★

「伝統研究」誌の発行人であり、長年ルネ・ゲノンと近しい関係にあった人物による、最も初期に出版されたゲノンの伝記であり、後の伝記の底本となっている。ゲノンファンにとって、なくてはならない一冊。 著者自身オカルト・シーンに詳しく、ゲノンとオカル…

ルネ・ゲノンと私

最近すっかりゲノ中となった私だが、かつては、名前だけは知っていたが著書を読んだことはなかった。むしろ避けていたと言ってもいい。やはり、「オカルト系」の人、と思っていたからだろう。 フリッチョフ・シュオンを読み始めてからも、シュオンの師がゲノ…

ルネ・ゲノン『ヒンドゥー教研究序説』(要約;Wikipediaより)

Logic and Metaphysics新記事 http://schuon.at.webry.info/201001/article_2.html Wikiに純粋形而上学に関する著作のサマリーがあるので、それを紹介。

スピリチュアル・ブームを内側から破壊する爆弾ルネ・ゲノン――ルネ・ゲノン『世界の王』★★★★

「アガルタ王国」というオカルト的題材によりながら、世界の伝統宗教が共有する「世界の王」という象徴を深く読み解いたルネ・ゲノンの著作の邦訳。 この著のきっかけになった、オッセンドフスキー『獣、人間、神々』というアジア旅行記のさらに元ネタである…

保守主義すら軽く乗り越える伝統主義者ルネ・ゲノン流階級闘争史観――Rene Guenon"Spiritual Authority and Temporal Power" ★★★★★

形而上学的・精神的領域に関わる教権と形而下的・物質的領域に関わる世俗権は、原初においては一つであったが、歴史が進むとともに分化していった。しかし、分化したとは言え、両者は一体であり、また、前者が後者に優越するというヒエラルキーがはっきりし…

エリアーデのゲノン評

John Herlihy ed."The Essential Rene Guenon: Metaphysics, Tradition, and the Crisis of Modernity"からもエリアーデのゲノン評(『神智学協会:ある擬似宗教の歴史』『心霊主義の誤り』に対する)を。 いわゆるオカルト・グループすべてへの、最も詳細で…

ゲノンの生涯と著作、ただし入門書としては使えない――Robin E. Waterfield"Rene Guenon and the Future of the West: The Life and Writings of a 20Th-Century Metaphysician"★★

前半1部がゲノンの生涯、後半2部がゲノンの思想と、構成自体はスタンダードなもの。1部の生涯については問題ないと思うが、2部の思想の紹介はどうだろう。ゲノンの著作からより、トラディショナリスト・スクールとは無関係な他の著作家たちからの引用・…

ルネ・ゲノンの生涯(Wikipediaより)

「Logic and Metaphysics」新記事 http://schuon.at.webry.info/201001/article_1.html 久々に更新してみた。

徹底的な反近代思想家ルネ・ゲノンの代表作――ルネ・ゲノン『世界の終末――現代世界の危機』★★★★

訳者田中義広が「解説」で述べている通り、ゲノンの思想の基本的骨格はこの本にほぼ言いつくされている。また、非常に読みやすく訳されており、ゲノンを読む際に障碍になりうる基本用語も丁寧に解説している。それゆえ、最初に読むに最も適当な本であると言…

『世界の王』レビューのつづき

1月12日記事『世界の王』レビューで、ゲノンはハードSFとしても読める、と書いた。 http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/20100112 たまたまRobin Waterfield"RENE GUENON and the Future of the West"を読んでいたら、エリアーデの次のような発言に出会っ…

「世界の王」という象徴をめぐって――Rene Guenon"The King of the World"★★★

「アガルタ王国」というオカルト的題材によりながら、いつものゲノン節で、世界の伝統宗教に共通して見られる「世界の王」という象徴の深い意義を探求している。まさにオカルトに精通した象徴学者ルネ・ゲノンの真骨頂と言ったところであろうか。 内容が内容…

猫耳常時装着ヴァンパイア、でも意外にしっかりしたダーク・ファンタジー――『月詠-MOON PHASE- Neko Mimi DVD-BOX』★★★★

改めて見てみたが、展開が急だ。第二話とか最終話のノリで、ED後に話が続く。 猫耳ばかりが目立つが、極端なデフォルメを廃し、演出は、全体にシリアスな雰囲気を壊していない。「人間が描けている」ファンタジーアニメとでも言おうか。 ↓OPは各話ごとに…

20世紀の形而上学者による近代文明批判の古典――Rene Guenon"The Crisis of the Modern World"★★★★

第一次世界大戦の終了直後、「世界の終わり」を感じさせざるをない時代状況の中上梓された本書は、「個人主義」「進歩主義」「物質主義」など、様々な意匠で現れている近代=西洋文明思想を、この世界を超えた原理の否定として性格づけ、多角的な批判的検討…

ラノベというジャンルがなければ存在しなかったかも知れない傑作――日日日『ささみさん@がんばらない』★★★★★

引きこもりの妹とシスコンの兄、という設定自体はありがちだが、それにきちんと理由づけをしているのが面白い。非現実的で荒唐無稽なストーリーも言葉の勢いでぐいぐい押していく。章分けした文章の分量も適度で、作者本人が言う通り、4コマ漫画のようにさ…

正統なダーク・ファンタジーの佳作――新井円侍『シュガーダーク 埋められた闇と少女』★★★

ご多分にもれず、ハルヒ以来のスニーカー文庫大賞受賞ということで購読。 たしかに文章表現力はあり、言葉をよく選んで書いていることも分かる。話もそれなりに面白く、ダーク・ファンタジーファンなら満足できる出来だろう。 しかし、舞台がほぼ共同墓地に…

新年

というわけで、2009年12月30日より広島に滞在、本日帰ってきたところ。 正月は原点に帰って(?)Frithjof Schuon"The Transfiguration of Man"を完読。 人間は神と動物の間で宙吊りになっている、つまり、上昇する力と下降する力、両者から引っ張られている…