ゲノンの生涯と著作、ただし入門書としては使えない――Robin E. Waterfield"Rene Guenon and the Future of the West: The Life and Writings of a 20Th-Century Metaphysician"★★

 前半1部がゲノンの生涯、後半2部がゲノンの思想と、構成自体はスタンダードなもの。1部の生涯については問題ないと思うが、2部の思想の紹介はどうだろう。ゲノンの著作からより、トラディショナリスト・スクールとは無関係な他の著作家たちからの引用・参照の方が多い。しかも、その中にはティヤール・ド・シャルダンユングなど、ゲノンの立場からは、はっきり反対の側にいると思われる人も含まれているのは、なんとも面妖な光景である。本文自体も、どこまでがゲノンの、どこまでが著者独自の考えなのか、いまひとつはっきりしない所が多い。
 少なくとも、ゲノンやペレニアリスト・スクールの思想になじんでない人が、ゲノンを知るために最初に接するには危険な本である。



 ではゲノン入門として何が良いのか? 「ゲノンのことはゲノンに訊け」で、ゲノンの作品を直接読むのが速い。ということで、やはり邦訳されている『世界の終末――現代世界の危機』(平河出版社)から、というのが妥当な選択だろう(解説も丁寧)。