新年

 というわけで、2009年12月30日より広島に滞在、本日帰ってきたところ。
 正月は原点に帰って(?)Frithjof Schuon"The Transfiguration of Man"を完読。
 人間は神と動物の間で宙吊りになっている、つまり、上昇する力と下降する力、両者から引っ張られているわけだ。「人間」という存在状態は固定的ではなく、自らを超越していく可能性を持つ。この超越性を否定することは、人間そのものを否定することにほかならない。ヒューマニズムの帰結――アンチ・ヒューマニズム
 宗教的主題を数多く扱いながら、フリッチョフ・シュオンの著作には不思議と抹香くささがない。かといって、ルネ・ゲノンほどに怜悧な冷たさもない。世界を超えた唯一の絶対的リアリティを説くが、単純に現世否定的ではなく、この世界の中にある、聖性へとひきつける力(たとえば美)を訴えてやまないところが、そうしたやわらかさを感じさせるのだろう。聖なる力(光)は全世界に浸透している。聖なるマーヤー。
 その他、労働そのものを聖なるもの(祈りそのもの)に変える、などヴェーユを想起させる興味深い主題も扱っている。シュオンに対して何の知識もないひとがいきなり読むといいかも知れない。まっさらな心でシュオンの言葉を受け止めれば、存在の変容を覚えざるを得ないだろう。