ラノベ

ラノベというジャンルがなければ存在しなかったかも知れない傑作――日日日『ささみさん@がんばらない』★★★★★

引きこもりの妹とシスコンの兄、という設定自体はありがちだが、それにきちんと理由づけをしているのが面白い。非現実的で荒唐無稽なストーリーも言葉の勢いでぐいぐい押していく。章分けした文章の分量も適度で、作者本人が言う通り、4コマ漫画のようにさ…

正統なダーク・ファンタジーの佳作――新井円侍『シュガーダーク 埋められた闇と少女』★★★

ご多分にもれず、ハルヒ以来のスニーカー文庫大賞受賞ということで購読。 たしかに文章表現力はあり、言葉をよく選んで書いていることも分かる。話もそれなりに面白く、ダーク・ファンタジーファンなら満足できる出来だろう。 しかし、舞台がほぼ共同墓地に…

禁断の果実か、腐った林檎か――杉井光『さくらファミリア!』★★

突然、多額の借金を背負い天使と悪魔と同居することになった主人公は、実はユダの生まれ変わりで・・というハチャメチャな設定はたしかにラノベ向き。お分かりの通り聖書を利用しているが、『ダヴィンチ・コード』なぞよりはるかにデタラメなので、あまり真…

琵琶湖に十字架、画にはなるわな――夏海公司『葉桜が来た夏』★★

女性だけで構成される異性人アポストリが襲来。互いに殺戮を続ける戦争の後、壁で囲い込まれた琵琶湖周辺で、地球人とアポストリは共棲を目指す。そんな中、家族をアポストリに殺された少年と、家族を地球人に殺された少女が出会う。 異種族の共棲(共生)は…

ラノベ版青春残酷物語――柴村仁『プシュケの涙』★★★★

傑作。タイトルが何だかなと思いつつ読みはじめたら止まらなくなった。ミステリ仕立ての前半部と恋愛少女漫画(ガールミーツボーイ)風後半部から成る。 キャラの立て方、設定、構成、文章と、非常に繊細できめ細かい。とりわけ由良と吉野の関係を描いた後半…

ラノベの功罪の罪の方――土橋真二郎『ラプンツェルの翼』★

苦労して読んだが売りが何なのかはっきりしない。アクションなのか、戦闘少女と主人である少年との擬似恋愛なのか、キャラなのか、萌え要素なのか。逆に言えば、ラノベにありがちなものをこれでもかと詰め込んでいるつもりなのかも知れない。 一つ一つのエピ…

「ニート」って言え!――杉井光『神様のメモ帳』1〜3巻★★★★★

目立たない高校生の主人公ナルミが、ふとしたきっかけでニート探偵(!)アリスと出会い、大事件に巻き込まれる。 ドラッグやマネーロンダリングなど、扱うテーマは重いが、全体に暗くない。また、文章が非常に良い。 「ねえ、ナルミ。ぼくと初対面の人間は…

ロード感のないロード小説――萬屋直人『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』★

「喪失病」という病が蔓延する世界で、少女と少年が旅をする、世界の果てまで。 この病によって、名前や証明写真が消え、存在そのものが消えていくという。子供じみた発想なのはラノベらしいといえばらしいが、アイデアがうまく消化されていない感じ。そもそ…

「罪と罰」、なんてのどかな時代もありましたっけ――入間人間『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸 』★★★

拉致監禁された過去を持つ女の子が、病気オブハートな状態のまま成長して自ら兄妹を拉致監禁。その幼児体験を共有する男が、なんとかその事態を収拾させようと奮闘。というへヴィな話を軽いタッチで描く。 西尾維新と比較されることもあり、特に戯言シリーズ…

ラノベの逆襲――伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』★★★★★

設定については前作のレビューで触れた。http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/20081009 ファッション誌のモデルもしている妹の裏の顔は、実は妹もののエロゲー大好きな激オタ。非オタ(だった)の兄が、妹の理不尽な言動に振り回されるも、最後はちょっとい…

ラノベがこんなに面白いわけがない――伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』★★★★

非FT非SFラノベ。 ファッション誌の読者モデルもする茶髪の女子中学生の妹が、実は極度のオタで「妹系」18禁ゲーム大好き、という設定。兄は非オタなので、「妹系」な展開にはならない。というか、むしろそのパロディになっているというべきか。といって…

谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』★★★

退屈な日常の中で、なにか面白いことを見つけようと、周りを巻き込みつつ突っ走る超自己中女子高生涼宮ハルヒ。だが、実は彼女こそ、この世界の命運を握っているのだった。 かなりベタで雑な設定である。アニメ化には向いているだろうが、それならそれで、あ…

ライトノベル版サナトリウム文学――橋本紡『半分の月がのぼる空』1〜4巻★★★

心臓を患った薄命の少女と彼女に恋心を抱く少年の話。よくも悪くも「いまどき」のシチュエーションだろう。ライトノベルの世界で、SFでもファンタジーでもないこういう作品が受けているのは面白い。キャラの作り方や自分語り的なところが、なにかしらライト…