ロード感のないロード小説――萬屋直人『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』★

kanedaitsuki2009-01-30

 「喪失病」という病が蔓延する世界で、少女と少年が旅をする、世界の果てまで。
 この病によって、名前や証明写真が消え、存在そのものが消えていくという。子供じみた発想なのはラノベらしいといえばらしいが、アイデアがうまく消化されていない感じ。そもそも固有名がないと感情移入しにくかろう。不条理文学を目指すなら別だが。いずれにせよ死のメタファーなのだから、存在が薄れていくところのみを残しても十分成り立ったのではないか。ただ、それだとラストが生きない。ラストが書きたくてこの設定にしたのだろう。しかし、それほど大事にすべきだったろうか。


旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)