ボーン・グノーシスト（生粋の真智者）フリッチョフ・シュオンの傑作――Frithjof Schuon"Spiritual Perspectives and Human Facts: A New Translation with Selected Letters"★★★★★

　純粋形而上学は難解である。万人向けではないからだ。しかし、分かる人には即座に分かる。たとえば、「世界は幻想、ブラフマンこそが現実。汝がそれなり」と聞いて、ぴんとくる人なら、この断片的・直観的に書かれた本書は、フリッチョフ・シュオン著作中、最も読みやすく、分かりやすいものと言えるだろう。
　ぴんとこない人は、まず、比較的順序立て、系統立てて書かれている本から入ることをおすすめする。たとえば、哲学的主題を扱う"Logic and Transcendence"や形而上学・エソテリスムについて組織的にまとめあげた"Survey of Metaphysics and Esoterism"、さらに比較宗教論"Transcendent Unity of Religions" "Form and Substance in the Religions"等を読んだ上でこの著作に目を通せば、必ず何か引っかかる箇所が出てくるはずである。

　長年、グノーシズム＝キリスト教異端という認識枠組みによって目を眩まされていたが、グノーシス＝真智ということに最近ようやく納得。興味のある方はJean Borella"The Secret of the Christian Way: A Contemplative Ascent Through the Writings of Jean Borella"やWolfgang Smith"Christian Gnosis: From Saint Paul to Meister Eckhart"を読まれたし。