イスラームの深奥――Frithjof Schuon"Understanding Islam"★★★★★

 タイトルから「入門書」的なものを想像するひともいるだろうが、実際には非常に難解な書だと思う。イスラームについてある程度知っていて、なおかつフリッチョフ・シュオンの諸著作に親しんだことがなければ、読み通すのはつらいだろう。
 Harry Oldmeadowが「シュオンの思考は深く潜り、深く潜ったままだ」と言うように、この書でもシュオンはイスラームの深奥にずっと潜行しつづけている。この本には一般的なイスラームのイメージは出てこない。シュオンはイスラームのコアを「純粋形而上学」であると理解しており、イスラームの教義の説明のために、当たり前のようにヴェーダンタの用語が使われる。しかしそのことによって、外面を突き破ってたどりついたイスラームの内奥のリズムが、シュオンの言葉を通して奏でられているのだ。
 相対主義の袋小路に迷い込んだ現代思想からはかぎりなく遠い、純粋でリアルな知がここにはある。