神学

英国聖公会の司祭叙階の無効性

(便宜上、杉本氏の発言は青字、教会の公式文書は緑字で引用する) 杉本氏は当ブログコメント欄で以下のように書いている。 http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/20070203/p2 バチカンも具体的に何が「不可謬」といえるかについては断定的に定めているわけで…

「不可謬の教義」(de fide)をめぐって

(便宜のため、引用の際、杉本氏の発言は青字、教会の公式文書は緑字で記すことにする)あとになって気づいたのだが、どうも「不可謬権」(不可謬性)について論点がずれてしまっている。 まず、杉本氏が「吉祥寺の森から」で以下のように書いたのが発端。 h…

教皇の不可謬の教導権:3

"The Papacy Lerning Guide"(Catholic Answers)より。 教皇不可謬権が行使される特別な仕方は第一バチカン公会議(1870年)で定義された。 「それは啓示された聖なるドグマであり、次のようなものである。ローマ教皇は聖座から(ex cathedra)、すなわち全キ…

ルフェーブル大司教の「教皇不可謬権」

杉本(Norihisa)氏は当ブログのコメント欄で以下のように書いた。 http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/20070203/p2#c 聖ピオ10世会がこれらの教義を奉ずることがおかしいと申し上げたことは私は一度もありません。ただ、彼らの言うところの「教会」や「不…

教皇の不可謬の教導権:2

"The Papacy Lerning Guide"(Catholic Answers)より。 不可謬権が公式に定義される以前から、教会の教父と博士たちは、教皇が神より授けられたこの権能を有することを理解していた。聖クリソログス(c.400-450)は司教たちを次のように励行している。「ローマ…

教皇の不可謬の教導権:1

"The Papacy Lerning Guide"(Catholic Answers)から、教皇不可謬権に関する箇所を紹介する。 先に私たちが学んだのは、イエスがペトロに権威ある地位、「結んだり解いたりする」(マタイ16:19)権威を伴う「鍵の力」を与えたということだった。ペトロが地で…

Patrick Madrid"Pope Fiction"★★★

教皇(権)について、よくありがちな神話・誤解を三十個列挙して、反証した本。目次を見ればどんな内容かはすぐわかる。 1.ペテロはなんら特別な権威を持っていなかった 2.Petros/Petra論 3.キリストはなぜシモン・ペトロを「サタン」と呼んだか 4.パウロに…

Ludwig Ott"Fundamentals of the Catholic Dogma"★★★★

カトリックの教義に関してCCC(Catechism of the Catolic Church)に並ぶ、ぜひとも持っておくべき書。正統教義について、聖書はもちろん、教父らや、公会議と教皇の公文書から豊富に引いて解説している。何が正統教義なのかだけでなく、なにゆえ正統なのか…

Mediatrix 仲介者マリア:センチメンタルな旅(7)

アメリカの代表的カテキストであるJohn A.Hardonは、第二バチカン公会議におけるマリア論の扱いについて次のように書いている。 「教会憲章」(Lumen Gentium)に、教会における「マリア主義」の最小限化を読み取った者もいる。彼らが言うには、マリアを結論…

"Catechism of the Catholic Church"★★★★★

Catechism of the Catholic Churchはネット(たとえばバチカンサイト)でも閲覧できるが、手元に置いて参照すべく購入。このBantam版は新書サイズのペーパーバックで値段も安価(現時点で1000円ちょっと)。欄外に充実したcross-refferenceがあり、またペー…

Donald H.Calloway ed."Immaculate Conception In The Life Of The Church: Essays from the International Morilogical Symposium in Honor of the Proclamation of Dogma of the Immaculate Conception "★★★★

「マリア無原罪の御宿り」教義宣言150周年を記念して編まれた論文集。六編収録してある。①The Immaculate Conception in Catholic Apologetics(Robert Stackpole) ②How dose the Immaculate Conception Relate to Every Human Conception?(Sr.M.Timothy Prok…

ネタ思いついたのでメモ

ギザトリニタス。

Mediatrix 仲介者マリア:センチメンタルな旅(6)

いわゆるマリア第五の教義(すべての恵みの仲介者、共同贖罪者)に関して、『聖母マリア 〈異端〉から〈女王〉へ』の中で竹下節子は以下のように記述している。 (第五の教義は)一九六二年の第二ヴァチカン公会議で、聖母マリアの位置づけが初めて特別の議…

Conceptio Immaculata 無原罪の御宿り:センチメンタルな旅(5)

第二バチカン公会議でも活躍した神学者スキレベークスは、驚異的なマリア神学の書『救いの協力者聖母マリア』において、聖ベルナールや聖アクィナスによる無原罪の御宿りの拒否の、積極的な側面を指摘している。 聖ベルナルドや聖トマスなどの神学者は、マリ…

Conceptio Immaculata 無原罪の御宿り:センチメンタルな旅(4)

スコトゥスの弁証によって神学的な解決(証明に非ず)をみたので、無原罪懐胎の教理と祝祭の正当性はさしあたり明らかになった。まずバーゼル会議(1439年)において肯定的な文書が出された。有効な公会議ではなかったが、この文書は強力な武器となった。Pelik…

Conceptio Immaculata 無原罪の御宿り:センチメンタルな旅(3)

無原罪懐胎教義に反対した神学者たちは、アクィナスに見られるとおり、魂の注入と聖化との間に、かならず一定の時間の経過を要する(ほんのわずかではあっても)と考えていた。それゆえ彼らは子宮内での聖化は積極的に支持(それゆえ「聖母の出生」の祝祭なら…

Conceptio Immaculata 無原罪の御宿り:センチメンタルな旅(2)

著名な教義史学者Jaroslav Pelikanの"Maria through the Centuries"は、文化史の中でのマリアの位置づけを探求した良書であるが、「大いなる例外―無原罪の懐胎」の章(pp189-200)でこの教義を取り上げている。Pelikanはマリアに関する教義は(他の教義も多か…

Conceptio Immaculata 無原罪の御宿り:センチメンタルな旅(1)

平均的な日本人に向かって「人間は生まれながらに罪はない」と述べたとしよう。強いて感想を聞くならば、おそらく多くの者は「何言ってんの、当たり前じゃないかそんなの。」と答えることだろう。そうだとすると、マリアが罪なしに生まれた、というのはとり…

Extra Ecclesiam nulla salus 教会の外に救いなし、再び

かつて私は、第二バチカン公会議で「教会の外に救いなし」という教義が廃止され、異教徒も救われるようになったと主張するあるクリスチャンに対する論争のなかで、一方で「第二バチカン公会議においてこの教義は廃止されていない」こと、他方で「教会外での…

教皇不可謬説について

教皇不可謬の教義は、マリアに関する教義と並んで(あるいはそれ以上に)、非カトリックのキリスト教徒により攻撃されている。そこには多くの誤解・無知もあり、それは非カトリックだけでなく、カトリック教徒にまで広がっている。いずれにせよ非常に論争的…

Immortal God:寝た子を起こす神萌エラー参上――稲垣良典『問題としての神―経験・存在・神』★★★★★

「神は死んだ」と宣告されて久しい。というか百年ほどたっているのだが、著者は神忘却とも言える昨今の世(とくに哲学界)の中心で「神」を叫ぶ。神は死んでねえぞ!そこらじゅう徘徊してるぞ! 近代哲学の成立過程で、理性は自らを「経験」の枠内に閉じ込め…

神学大全第一部第一問第一項「聖なる教え、それは必要か?」

およそ知は存在するものについての知であり、真であるものは存在する。それら(神をも含む)は哲学がじゅうにぶんに取り扱っている。理性を超える事柄についてひとは知ろうとする必要がない。神学を包括する哲学さえあれば、神学としての聖なる教えなど不要…