数学

数理神学は形而上学的神学に勝利したか

落合仁司は『数理神学を学ぶ人のために』で数理神学と形而上学的神学を対比してこう言う。 形而上学的神学は神の愛を否定した。形而上学的神学を代表する一人であるカンタベリーのアンセルムスはこう言う。「苦難に対する共苦の感情にまったく動かされないと…

落合仁司の数理神学を使って奇妙な定理を証明してみる

落合仁司は言う。 数理神学の言語である数学言語は、近代自然神学すなわち近代自然科学の言語でもあるので、それに完敗した伝統的自然神学したがって伝統的組織神学の言語である哲学言語に比べ、遥かに広大な普遍性ときわめて強靭な反証可能性あるいは論証力…

落合仁司は「十字架の神学」をほんとうに理解しているのか

落合仁司は『数理神学を学ぶ人のために』で、これまで偏愛しつづけたパラミズムを捨てて「十字架の神学」を数理神学の看板に掲げたが、実際の所、彼は「十字架の神学」をどうとらえているのか。落合仁司自身の言葉を引こう。 神の受難、神の共苦、神の弱さの…

数理神学という知の欺瞞――落合仁司『数理神学を学ぶ人のために』★

ようやく再投稿できるようになったので、文章を改正してアップ成功。 無限集合論は神学に適用できるという発想の下、落合仁司は数々の同工異曲の本を上梓しているが、これはその最新版。 これまで落合仁司は、正教会神学やパラミズムを持ち上げていたが、こ…

落合仁司はなぜパラミズムを放棄したのか

数理神学最新版であり数理神学原論とも呼べる『数理神学を学ぶ人のために』を一読して少々不審に思ったことは、『地中海の無限者』以来、あれほど偏愛していたパラミズムがほとんど影を潜めていることだ。軽く触れてはいるが「パラミズムはキリスト教の教義…

数理神学という虚妄――落合仁司『数理神学を学ぶ人のために』★

無限集合論は神学に適用できるという発想の下、落合仁司は数々の同工異曲の本を上梓しているが、これはその最新版。 これまで正教会神学やパラミズムを持ち上げていた落合仁司だが、なぜかこの書では軽く触れるのみである(文献表には正教会神学者の本は一切…

神学と数学の類似性

「存在論日記」さんが「カトリックの擁護」記事に触れていることに気づいた。 http://sonzai.org/2007/11.htm 神学と数学との間には類似性があると私は考えている。 神学は、「神は存在する」という命題を含んでいる。それは反証可能性を持たない命題であり…

NHKスペシャル『100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎〜』

昨日本当にたまたま視聴(夜10時NHK総合)。ポアンカレ予想の話だが、解決していたことすら知らなんだ。 この問題を解決したロシアの数学者グリゴリ・ペレリマンは、その功績に対して贈られたフィールズ賞を、賞金とともに辞退したばかりか、その後失踪し…

まずはこれを読め、話はそれからだ――林晋/八杉満利子訳『ゲーデル 不完全性定理』★★★★

あまたある不完全性定理についての不完全な入門書は即刻ゴミ箱へ! ゲーデルの原論文に加え、専門研究者である林晋による目の覚めるような詳細な解説がついて、しかも文庫で真打登場。 不完全性定理はおおくのひとが理解しているようなものではない。とくに…

サイモン・シン『フェルマーの最終定理−ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』★★★★ 足立恒雄『フェルマーの大定理が解けた!−オイラーからワイルズの証明まで』★★★

300年もの間数学者たちを悩ませてきたフェルマーの大定理をめぐるドラマ。よくいわれるように、フェルマーの大定理は、問題の意味を理解するのは小学生並にやさしいのに、証明するのは非常に難しいという、数学特有の面白さがある(とはいえ、この手の問…

ポール・ホフマン『放浪の天才数学者エルデシュ』★★★★

数学界以外では無名の天才数学者の伝記。まるでウディ・アレンの映画に出てきそうな、常識の枠をはみ出た行動をする人物だ。それでも周りに愛されたのはよきキャラクターのおかげだろう。人間も捨てたものではないと思えて、とにかく読んでいて元気になる。…

川久保勝夫『トポロジーの発想―○と△を同じと見ると何が見えるか』★★★

日常への応用をふんだんに織り交ぜながら、初等的なトポロジーの様々な側面をわかりやすく解説。不動点定理などは、数学の定理の不思議な凄みを感じる。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062570769/ref=pd_sim_dp_1/249-8164512-0418725

ジョン・アレン・パウロス『数学オンチの諸君!』★★

これは再読。世の数学オンチを嘆き、非合理主義への警鐘を鳴らす書。とはいえ、かたぐるしくなく、たのしく読める。特に、統計・確率といった日常に深くかかわる数字を取り上げているのが良い。数学教育の問題は日本のみならずアメリカでも深刻であることも…

市川信一『ネットワークのソフィストたち−「数学は語りうるか」を語る電子討論』★★

著者の大学の数学試験に、数学用語の定義を問うような記述式問題を導入してはどうかという提案を契機に、ネット会議室において活発に交わされた論議をまとめた本。かなりかりこまれたようで、この手の本にしてはまとまっていた。私自身は、どちらかというと…

山下純一『グロタンディーク 数学を超えて』★

言動も業績も怪物的な数学者の伝記。自身所属する研究所から、軍の支援があったという理由で退職し環境運動を展開するといった倫理的潔癖さは、興味はひかれるが、内実がわからないのでなんとも評価しづらい。業績の方は、数学の基盤を改革し、新しい数学世…

畑村洋太郎『直観でわかる数学』★★

数学嫌いのひと向け、というよりは数学について「苦手だが興味がある」ひと向け、といったところで、狙いはいい。しかし、教条主義を嫌うあまり、反教条主義という教条主義におちいることはおうおうにしてあるものだが、この本にも若干そういう匂いを感じた…

ティモシー・ガウアーズ『1冊でわかる 数学』★★★

これは英語圏の啓蒙書の傾向ともいえるが、非常にエレガントな本。ぐいぐいひっぱったりたたいたりする口調ではなく、バロック音楽のごとく、文章が実に上品なのだ。不思議にこのタイプの本は、日本では少ない。啓蒙書の悪書は、やたら大げさな口ぶりでうる…

吉永良正『新装版 数学・まだこんなことがわからない』★★★

一般読者向け現代数学本において、数学の未解決問題を取り上げるのは常套手段といえよう。誰しも解かれていない問題というものには興味がわくものだし、そうした問題を解こうと力を傾注した数学者たちの姿は、一篇のドラマとなりえるからだ。この本はどちら…