市川信一『ネットワークのソフィストたち−「数学は語りうるか」を語る電子討論』★★

著者の大学の数学試験に、数学用語の定義を問うような記述式問題を導入してはどうかという提案を契機に、ネット会議室において活発に交わされた論議をまとめた本。かなりかりこまれたようで、この手の本にしてはまとまっていた。私自身は、どちらかというと、数学プロパー以外は数式をツールとして使えればとりあえず十分という立場だが、こういった問題から派生してくる様々な意見をうかがうのはためになる。とはいえ、どれほどまとまっていようと出版する必要はあんまりない、と思う。ネットにはネットの文脈があり、独特のライブ感があるのであって、それを書物に落とすと、その価値はほとんどなくなる。ネット上で手軽に読める状態にすればよかったのではなかろうか。討論参加者の中でひとり出版を強く阻止しようとしたひとがいるようだが、賛成である。著者はもうけようという気がない、というが、逆にもうけようという気がないなら、わざわざ本にする必要はなかった。
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