漫画

4コマの中道――かきふらい『けいおん!』1・2巻★★★★★

廃部になりかけた軽音部を舞台に繰り広げられる、最近アニメ化もされた人気漫画。いまさらながら読んでみたが、面白い。絵もうまい。4コマながら完全にストーリー化されており、いわゆる「ぐるぐる漫画」ではない。バンド活動についての、著者の経験と知識…

すごすぎ らき☆すた

「らきすた OP もってけ!セーラーふく ドラム」 http://www.youtube.com/watch?v=jM_Bs4MfAB8

余談――加藤元浩『Q.E.D.-証明終了-ザ・トリック・ファイル』★★

こういうファンブックは基本買わないのだが、『Q.E.D.』は例外の一つ。 作者による自作解説が集録されており、『レッド・ファイル』については以下の通り。 金融工学で株価暴落は防げません! 世界的に株価が大暴落したとき、ラジオでコメンテーターが言って…

ベテランの風格が出てきた――加藤元浩『Q.E.D.』32巻★★★

NHKで実写ドラマ化もされている理系ミステリ漫画。「マジック&マジック」「レッド・ファイル」二編収録。 「マジック&マジック」はシリーズものならではの味なストーリーで佳作。ちと驚いたのは「レッド・ファイル」で、ずばり金融工学をモチーフにして…

『鋼の錬金術師』&チェス

おそらくすでに誰かが紹介しているに違いないが、第6巻にこういう局面が(p.164 ただし、p.165では描かれているe6ルークはこのページでは欠落している)。 以下、 Ne5 c5 Bxh6+ Kxh6 Nxf7+ にて、黒投了。 チェスを知っているんだかいないんだかよく分から…

三十路前のショタコンキラー現る?――美川べるの『ストレンジ・プラス』1〜8巻★★★★★

→真ん中が主人公(♂) 圧倒的な表現力と耽美力で繰り出されるハイパーギャグの嵐。まさしく魔夜峰央の後継に相応しい逸材。ギャグ漫画は短命と言われたのは今は昔で、天才榎本俊二をはじめ、長期間現役で活躍する方々が増えてきた。この漫画も、流行ネタもな…

どんな問題も論理で解決?――つじ要『論理少女』★★

いわゆる論理パズルを、漫画の小道具としてではなくメインとして扱う時点でかなり無理がある。シチュエーションが学校内に限定されているのも、広がりが期待できない。市で流行している「津隠問答」という無理目の設定をするくらいなら、いささかベタではあ…

らき☆すた神輿

夕方のテレビニュースで見てぎょっとした。面白いが、ニュース価値はないだろうに。 しかし、鷺宮町は『らき☆すた』で押しまくっているようだ。素晴らしい。神輿自体は低コストというのが実によろしい。「鷺宮町商工会ホームページ」 http://www.syokoukai.o…

真昼のルサンチマン――ケイケイ『ワンダフルライフ?』1巻★★★★

ありていに言えば「OLの愚痴漫画」だが、絵柄もあいまって、妙に達観しているところが面白い。場合によっては自虐で落すところは、故ナンシー関のようなニヒリズムぎりぎりのシニシズムを思わせる。前作『ジュゲムジュゲム』全5巻もほぼ同じ主題と設定で…

魂を殺すことの出来ない者を恐れるな――古谷実『ヒミズ』1〜4巻★★★★★

『稲卓』しか知らなかったのでまったくノーマークだった。読後、ショックで一時的に感覚が麻痺してしまった。古谷実恐るべし。 ジャンルとしては望月峯太郎のホラーものやいがらしみきおの『SINK』に類する。ベタな表現をすれば現代版『罪と罰』。アキハバラ…

零戦に乗りたくなる――本そういち『ガンパパ島の零戦少女』1巻★★★★

ほぼ全編飛行シーン。車モノで走行シーンが延々つづくものがあるかと思うが、そういう感じか。表紙から想像できるように、飛行機の描写もそれほど「メカメカしい」(from 吾妻ひでお)ものではない。と思っていたら、もともとはごりごりの劇画タッチの方のよ…

アンチ癒し系は癒し系に通ず――氷川へきる『ぱにぽに』1〜10巻★★★★★

『らき☆すた』が萌え系に見えて中身は普通の四コマなら、こちらは萌え絵にして中身はクレイジーだ。『ゴールデンラッキー』を髣髴とさせるが、ゴッキーほど肩に力が入っておらず、脱力系の味もある不思議な作品となっている。いまだ連載中。 アニメの方は見…

いまどきこんな青春――柏原麻実『宙のまにまに』1〜4巻★★★

アフタヌーンにしては珍しくというべきか、いや逆にアフタヌーンだからこそというべきか、こっぱずかしくなるような学園青春もの。なんだか地方の大学の映研が撮ったような恋愛未満的なあまずっぱいシチュエーションが、今の私のような腹黒いおじさんには耐…

和風メイド参上――アサミ・マート『木造迷宮』★★

売れない三文小説家と彼に仕えるお手伝いさんをめぐる話。日常系+レトロ+変則メイドという組み合わせ自体は多くの需要を見込めるのに、何かもう一押しが足りない。決して絵も話も下手ではない。テイストは芦奈野ひとし『ヨコハマ買い出し紀行』に似ている…

未来の漫画のスタンダード――石黒正数『ネムルバカ』★★★★★

石黒は、画力、物語構成力、言葉の選択、どれをとっても一級品で、いわゆるアーティスティックなコミックを描ける多くのスキルを持っているはずだが、それらをすべてポピュラリティのある「大衆文化」としての漫画へと変換している。発想の独創性という通俗…

凡庸なる非凡――桜場コハル『みなみけ』5巻(限定版)★★★★

「日常系」「脱力系」に入るだろう。背景の省略されたシチュエーションコントとも言えるが、絵が繊細でデフォルメも抑制され、間を多用した他に類を見ない独特な作風となっている。 アニメの方は味があるがいささか散文的なこの漫画をうまく肉づけし、よくキ…

カワイイ系+私小説+将棋=???――羽海野チカ『3月のライオン』第1巻★

将棋漫画というだけで期待したのが馬鹿だった。うじうじする主人公。どうも過去に何かあったようだ。じゃあ、将棋いらんやん。 高校生プロ棋士という設定は別に非現実的ではないが、むしろ奨励会員(プロの卵)を題材にした方がよかったのではないか。その方…

マンネリズムの極地――倉島圭『24のひとみ』1〜4巻(続)★★★★

つい最近まで小説原作の漫画かと思い込んでいた。そうか、学級崩壊叫ばれるなか、先生と生徒の純な交流を描いた物語が今こそ必要とされているのか。でも、なんでチャンピオンで? 蓋を開けてみるとタイトルの印象とはまったく逆で、嘘つきの女教師に生徒たち…

幻のカルト漫画復刻――鈴木志保『船を建てる』上巻★★★★★★

十年も前に読んだろうか。その独特のスタイリッシュな画風、乾いた退廃を感じさせる世界観、寓意的というには抽象的過ぎるとも言える奇妙なアシカたちの物語は、『ぶ〜け』の連載陣の中で異彩を放っていた。今ならCOMIC IKKIにでも載りそうな作品で…

極上オフビートコミックを召し上がれ――石黒正数『それでも町は廻っている』第1〜3巻★★★★★

下町のメイドカフェを舞台にしたドタバタコメディ。面白いじゃないか。文句なく★5つ。 テンポや間やセリフ回しから画風に至るまで北道正幸にそっくりだ。北道師亡き今(冗談です)、劇画ギャグの渇きを癒す数少ない逸品。http://www.amazon.co.jp/%E3%81%9D…

闇のこちら側――古屋兎丸『彼女を守る51の方法』1〜3巻★

東京に都市直下型地震が起きたという設定のパニックホラーもの。絵柄はあっちに行ってない梅図かずお先生のよう。しかし、御大や、あるいは望月峯太郎『ドラゴンヘッド』のようなアレゴリカルな作品に比べれば、漫画として劣るのはいかんともしがたい。専門…

大いなる女装?――宮野ともちか『ゆびさきミルクティー』1〜7巻★★

主人公が女装趣味ということを除けば、ちょっとエッチな純愛路線というマイナーな青年漫画にありがちな設定とストーリーである。画力もいまひとつで、ひっぱっていくためか、無駄な登場人物が出てくるのも難。短編くらいならこれでいいんだろうけど。 http:/…

残酷な天使のせいで――桜井のりお『みつどもえ』第1巻★★★

子供を主人公にしたさして珍しくないギャグ漫画。表紙からは分かりにくいが、描線はかなり不安定。しかし味はある。可愛くない子供の表情はむしろグロだ。シンプルな作画のあずまゆきひこ『よつばと!』の対極にある。 http://www.amazon.co.jp/%E3%81%BF%E3…

人間だって生きている――石川雅之『もやしもん』1〜4巻★★★★

農業学校を舞台にした漫画。洪水のように書かれている微生物学の薀蓄は、必ずしも筋に有機的に結びついていないが、ここまでくると快感に変わる。 それはそれとして第一巻で「可愛い!」と目をつけていた蛍くんが途中でいなくなったと思いきや、そっちかよ!!…

戴冠せるアナーキー――榎本俊二『えの素トリビュート』★★★★

『ゴールデンラッキー』は条理ある不条理、論理的狂気というものの極北に到達した。その先はないものと思っていたら、一転して『えの素』全九巻は生々しいエログロを素材にしながら、さらなるアナーキーに突入している。泥酔していない醒めたアナーキー。ア…

私小説にあらず――吾妻ひでお『失踪日記』★★★★

小学生以来の吾妻ひでおファンだが、この評判作は最近ようやく読んだ。浮浪者・下層労働者としての生活やアルコール依存症での入院生活など、私には経験はないが、決して遠い世界だとは思わなかった。私にとってはじゅうぶん身近でリアルである。 モチーフか…

木尾士目『げんしけん』8・9巻★★★★★

おたく青春漫画、完結。だらだら続けず潔い。いちばんせつないのは斑目だったんだなあ。 本屋で通常版を買ったのだが、受注生産品のはずの限定版がアマゾンで出ていたのでそっちも購入手続きした。とりあえず入手できるうちは入手しておくということで。http…

高津カリノ『WORKING!!』1・2巻★★★★★

ファミレスを舞台にしたシチュエーション4コマ。登場人物はみなひとくせあり、彼らのからみあいが中心。ベタといえばベタ、パターン化されているといえばパターン化されているが、絵のセンスやテンポなど熟練しており、完成度は非常に高い。破壊的な笑いでは…

タイムリーな小品――小林よしのり『いわゆるA級戦犯』★★

東京裁判が事後法による一方的なものであること、「A級」が罪の重さに関係しないこと、など基本的な事項を抑えつつ、東條や重光などの個人をピックアップして事績を詳述した小著。残念ながらそれほど目新しいことが書かれているわけではない。また、全体に『…

「ロリータ」を超えるロリータ漫画――私屋カヲル『こどものじかん』1巻★★★★★

純愛ロリ漫画。歳の差、教師と生徒(小学生)という関係性からインモラルなものを想像しそうだがそうでもない。そうした設定をいったん括弧に入れれば、ごく普通のラブコメととして読める。そのあたりの自然さをひねり出しているところに作者の力量を感じた…