幻のカルト漫画復刻――鈴木志保『船を建てる』上巻★★★★★★
十年も前に読んだろうか。その独特のスタイリッシュな画風、乾いた退廃を感じさせる世界観、寓意的というには抽象的過ぎるとも言える奇妙なアシカたちの物語は、『ぶ〜け』の連載陣の中で異彩を放っていた。今ならCOMIC IKKIにでも載りそうな作品である。エドモン・ジャベスのように詩的なタイトルもいい。
それ以後お見かけすることなく月日が過ぎ、QUICK JAPANあたりに捜索されそうな幻の作家にでもなられたかと思っていたら、今でも漫画家として健在であることを最近知った。
もちろん私はオリジナル版で所有しているが、復刻版も買った。初期明智抄ともども全国の好事家をうならせる漫画がまた日の目を出て、たいへんめでたい。