経済

たかが貯金本と侮るなかれ――横山光昭『年収200万円からの貯金生活宣言』★★★★★

サブプライムローン問題から生じた金融不安の中、堅実な投資策をすすめる本も売れてきているようだが、通常それらは、ある程度の年収があり、余裕資金のある人向けである。この本は、さらに敷居を下げ、年収が低く、多額の借金のある家計を前提に、そもそも…

ゆうこりん目当てで買うものではない――『焼肉屋は食べ放題なのになぜ儲かるのか~小倉優子と学ぶ会計学~ 』★★★★

表紙を見れば推測できるとおり、結構堅いつくりである。本格的。小倉優子はおそらく名義貸しのみ。 最近この手のサブカルな会計本が増えており、二番煎じかと思いきや、「焼肉小倉優子」チェーンを題材にしており、極端に経営者視点なのが珍しい。そういう意…

隔靴掻痒――若林秀樹『ヘッジファンドの真実』★

現役ファンド・マネージャー執筆ということで、その経験と知識から書かれており、その点は興味深くもあり貴重でもある。しかし、世のヘッジファンドに対する誤ったイメージを正したいという志は良しとして、それに十分成功しているとは言いがたい。 解説が自…

裁定取引(アービトラージ)について

「サヤ取り」とも言う。LTCMをはじめ、多くのヘッジファンドが使っている投資手法なのだが、わかりやすいイメージでいうとこんな感じだろうか。 実際にあった話らしいが、さるハンバーガーチェーンで、チーズバーガーセットとダブルバーガーをたのんだ場…

ゆうこりんの明日はどっちだ――『小倉優子のはじめましてFX(外国為替証拠金取引)』★

くそまじめに数あるFX本と比べると、内容のわりに1,300円はちと割高感がある。が、もともとジェット証券の販促用(口座開設時のプレゼント)として製作されたらしく、ならテクニカルチャートにまで軽く触れているので、こんなものか。 ところで、冒頭に収…

金融帝国衰亡史――ロジャー・ローウェンスタイン『最強ヘッジファンドLTCMの興亡』★★★★

ノーベル経済学賞受賞者ショールズとマートンを擁した伝説のヘッジファンドLTCM(Long Term Capital Management)の栄枯盛衰を描いた一冊。取材やインタビューを重ね、臨場感ある筆致で秘密のヴェールに隠されていたLTCMの内部事情に分け入っている…

投資がギャンブルで何が悪い?――橘玲『臆病者のための株入門』★★★★★

私事に属するが、同著者の『黄金の羽』シリーズは私の世界観や人生観を大きく変えたといっても過言ではない。ほとんど思想的な影響力を持っている。この本は、そうした独自の哲学を(それと分からず)提示している著者による株投資入門本である。 著者の特徴…

タイトルに恥なし――田渕直也『世界一やさしい金融工学の本です』★★★★

Amazonにアップされている著者本人による紹介文が申し分ないので転載しておく。 出版社/著者からの内容紹介 金融工学とは、「数学や物理学、統計学といった数理的な分析手法を駆使して、金融に伴うリスクの測定や金融商品の価格分析を行なう理論体系」のこと…

いやむしろ金融工学の天使だ――吉本住生『金融工学の悪魔―騙されないためのデリバティブとポートフォリオの理論・入門』★★★★

Amazonレビューより転載。 金融工学の脱神話化, 2009/1/5 by kanedaitsuki 「金融工学」は難解な高等数学の衣をまとうことで、実像とはかけ離れた怪物へと仕立てあげられている。著者はそうした風潮を破るべく、「金融工学」の脱神話化を試みる。 その試みの…

唯一無二の会計小説――山田真哉『女子大生会計士の事件簿』DX.1・DX.2★★

気づかなかったが、実はベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』の著者なのね。 筆者があとがきで言うように、ハードな経済小説ではなく、小説を用いた会計学入門書のような按配。ミステリ的味わいのある軽い短編集であ…

ポール・クルーグマン『良い経済学 悪い経済学』★★★

いろいろなことが述べられているが、肝要なのは、国家を企業と等値して国際競争力なる曖昧な概念を持ち出すような考え方は、ごく普通の経済学から見て、トンデモだということだ。自由貿易は、双方にとって良い面の方が大きい。ところが実際には、クリントン…

橘玲『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』★★★★

タイトルだけ見るとあやしい自己啓発かともまがうが、中身はシビアでリアルな実践的経済読本。著者は、世間的に関心は高いが中身のよくわからない「不動産」と「保険」をとりあげ、必要最低限の知識を提供している。たとえば「不動産」は(「保険」もだが)…

小田中直樹『ライブ・経済学の歴史』★★★★★

学問的水準を落とさないまま、できるかぎり平易に書かれた経済学史の良書。一般的な通事的記述ではなく、経済学が扱ってきた主な7つのトピックをピックアップし、それについて経済学がどのように考えてきたかを解説したところがユニークかつ鋭い。この本を…

飯田泰之『経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える』★★★★

経済学を使ってロジカルシンキングにたしなむ、という、ありそうでなかった本。世にはびこる経済理論は、実際のところ、どういう場合でも成り立つ恒等式すら無視したとんでも論だったりするのだが、その際、初歩的な論理思考に慣れ親しむだけでも、そのこと…

稲葉振一郎『経済学という教養』★★★

著者のスタンスは、理論的には貨幣的ケインジアン、政策的にはリフレ派に共感というところらしいが、スミス―ワルラス派やマルクス主義にも目配せがきいていて、その長所を拾い上げているところがよい。また、この本で、日本の経済学の歴史もひとわたり見通す…