いやむしろ金融工学の天使だ――吉本住生『金融工学の悪魔―騙されないためのデリバティブとポートフォリオの理論・入門』★★★★

kanedaitsuki2009-01-07

 Amazonレビューより転載。

金融工学の脱神話化, 2009/1/5 by kanedaitsuki

 「金融工学」は難解な高等数学の衣をまとうことで、実像とはかけ離れた怪物へと仕立てあげられている。著者はそうした風潮を破るべく、「金融工学」の脱神話化を試みる。
 その試みのための武器がふるっている。高等数学に対して、小学生レベルの「算数」だ。実際に、四則演算のみでブラック・ショールズ式の近似解を出し、実践的にも、必ずしも高等数学は必要ないと説いている。
 勘違いしてはならないが、この本は「金融工学」批判本ではない。末尾のレビュー集でも分かる通り、むしろ著者は内容を理解しないままやたらに「金融工学」を批判する論者に否定的である。著者の意図は単に、「金融工学」のありのままの姿を、高等数学という経路を通らずに理解させることだ。その啓蒙的意図は、多くの類書に比べてはるかに成功している。この本にそれ以上の高度な内容を求めるのはないものねだりというものだろう。
 ただ一点、タイトルは著者の「脱神話化」の意図に反すると思われる。編集者の意向かも知れないが、『さおだけ屋〜』のような、もっとキャッチーなタイトルをつけていれば、もっと売れたのでは?

 簿記の勉強で興味を持ち、金融関係の本をいろいろ読んでいるところ。


金融工学の悪魔―騙されないためのデリバティブとポートフォリオの理論・入門