稲葉振一郎『経済学という教養』★★★

著者のスタンスは、理論的には貨幣的ケインジアン、政策的にはリフレ派に共感というところらしいが、スミス―ワルラス派やマルクス主義にも目配せがきいていて、その長所を拾い上げているところがよい。また、この本で、日本の経済学の歴史もひとわたり見通すことができる。こう並べていくと、いかに経済学(正確に言うと、経済学者の言動)が実際の経済状況に応じて変化していくかもわかる。文章の軽さ、まとめ方のさっぱり感を、さすがと見るか、もっと重厚にできたのに、と見るかはひとそれぞれだろう。私はこの手の文体なら、もっと軽い媒体で出すべき、と思いますが・・。東洋経済新報社じゃなくて、新潮社からとか? ただ、著者の、「経済学」という学問に対する尊敬の念を読者に伝えたいという態度には共感した。私が漫画やアニメについて語ったり書いたりする際もそうなので。なにかしっかりした専門分野を持っているひとは、自分にとって未知のものにも専門分野ならではの面白さがあるということを想像できておかしくないのだ。
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bewaadさんによるこの本の書評http://bewaad.com/archives/themebased/2004/bookreview.htmlは、たいへんためになります)