たかが貯金本と侮るなかれ――横山光昭『年収200万円からの貯金生活宣言』★★★★★
サブプライムローン問題から生じた金融不安の中、堅実な投資策をすすめる本も売れてきているようだが、通常それらは、ある程度の年収があり、余裕資金のある人向けである。この本は、さらに敷居を下げ、年収が低く、多額の借金のある家計を前提に、そもそも貯金するためにはどうすればよいかの具体的な方法を解説している。
その方法は、書き出して見ると非常にシンプルだ。
①家計簿をつける(自分のお金の使い方の癖を把握する為)
②目標を決める(モチベーションを維持する為)
③目標達成までの期間を決める(計画の無理を防ぐ為)
もちろん最重要なのは①で、お金の使い方を「消費」「浪費」「投資」に分けて記録することで、自分の金銭感覚を見えるようにする。「浪費」を減らし「投資」(貯金はここに含まれる)を増やすのが目標。浪費癖のある人は、そもそも自分が何に何のためにどれだけお金を使っているのかについて鈍感(どんぶり勘定)なのである。
②の目標は、具体的で現実的でなければならない。たとえば、8万円ためてカメラを買う、旅行をする、など。漠然としたものや、不可能な目標は、モチベーションの維持に役立たない。
③期間は90日が長すぎず、短すぎず適正。かりに目標を達成しなくとも、三ヵ月後にそれまでの履歴を検証し、第二段の開始の為の反省を行えば良い。
著者は実際に3800人の貯金ゼロ家計を再生しており、説得力がある。
素晴らしいのは、筆者は過度な禁欲主義をすすめず、人間の弱さを認めて、無理なく実行・達成可能なシステムを練り上げようとしているところだ。家計の管理は個人的なレベルの問題であるが、会社の経営にも応用可能であり、意外に射程距離の広い著作である。会計学的思考を鍛える本としても推薦できる一冊である。
年収200万円からの貯金生活宣言