飯田泰之『経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える』★★★★

経済学を使ってロジカルシンキングにたしなむ、という、ありそうでなかった本。世にはびこる経済理論は、実際のところ、どういう場合でも成り立つ恒等式すら無視したとんでも論だったりするのだが、その際、初歩的な論理思考に慣れ親しむだけでも、そのことに気づきうる。経済というのは日常的になじみが深いだけに、個人的な体験から、マクロな社会的結論にとびつきやすい。しかし、経済についての場合、「常識」は必ずしも真にならないことがはなはだ多い。そこで、物事を単純化し、異論が出にくい要素を取り出して推論を組み立てていく必要があるわけだ。その当たり前とすら思えることを、この本は実に懇切丁寧に解説してくれ、その応用として、いま現在直面している日本のデフレ状況に対して論理的実証的な処方箋としてリフレ政策を提示してくれる。
難を言えばいくらか誤植らしきところがある。それでも経済に関して縁遠いひとが、その筋のものを読もうとするならば、まずはこの本を手にとってみてほしい。絶対に損はしないと私が約束する。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478210489/qid=1096112546/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-1083540-4887412