隔靴掻痒――若林秀樹『ヘッジファンドの真実』★

kanedaitsuki2009-01-25

 現役ファンド・マネージャー執筆ということで、その経験と知識から書かれており、その点は興味深くもあり貴重でもある。しかし、世のヘッジファンドに対する誤ったイメージを正したいという志は良しとして、それに十分成功しているとは言いがたい。
 解説が自ら経営するヘッジファンドの投資手法(株式ロング・ショート)に偏っており、他の手法については不十分で、しかもまとまっておらず非常に分かりにくい。デリヴァティヴについてもほとんど説明がない。 つまり、事実関係に間違いがないとしても、個人的立場によるかなり主観的なヘッジファンド本になってしまっており、タイトルから読者が想像するものとはずれている。
 とは言え、ヘッジファンドの定義は本場のアメリカでも幅があり、ヘッジファンドがまだ一般的ではない日本ではなおさらで、客観的で総合的な解説書を求めるのはないものねだりかも知れない。


ヘッジファンドの真実 (新書y)