男系維持且つ女性天皇容認をシミュレートしてみると

「男系女性天皇」なら容認という向きの方は、その方向に皇室典範を改正せねばならないが、果たしてどこまでそれをシミュレートしているのだろうか。この問題にまで突き進んでいる意見は寡聞にして知らない。
まずは皇位継承者を男子限定にしているところを「男系の女子」に限って女子も入れることになる。だが、男系維持のためにはこの女子の皇子皇女は皇位につけない。現皇室の直系ゆえの愛子内親王殿下リスペクトなのだということなら、果たしてその子供が皇位継承から除外されているところの(女性)天皇に対して、そのリスペクトが続くだろうか。要は、女性天皇を容認するならば、皇子皇女もまた皇位につくというほうが、自然な思考の流れというものである。これまでの女帝は未亡人か生涯独身であり、その後胤の扱いについて頭を悩ます必要はなかった。
また男女間の皇位継承順位はどうするのだろう。男性優位とするならば、傍系の皇位継承も可と認めるかぎり、じゅうぶんな皇男子孫が確保されているかぎり、女性に皇位が移ることはほとんどない。もし移るとすれば、すでにほんとうの皇統断絶の危機にあると見た方がよい。これでは女性天皇容認の意味はほとんどなくなる。第一子優先ということならば、これから確率的に2分の一もの女性天皇が誕生してしまうが、それは歴史的にいってかなり異様な光景である。果たして一代限りの天皇が半分も生じることは、「万世一系」にふさわしいだろうか。また、そのそれぞれの女性天皇についても、やはりその皇子皇女は皇位を継げないが、かような天皇が権威となりうるのだろうか。
繰り返し述べてきたように、皇婿の問題もある。女性天皇(皇太子)の配偶者を見つけるのは、かなり困難だろう。独身のまま過ごされる天皇もたくさん生まれることになるだろうが、そのことは天皇への世間の軽侮を招かないだろうか。
愛子内親王殿下に限って認める、という考え方ならば、果たしてそのような例外を可能とするために、どのように「皇室典範」を改正するというのだろう。愛子天皇誕生のための特別立法でも? それこそ国民感情にそぐわないと思うが。だいいち皇婿の問題が解決できていない現状において、愛子内親王殿下を皇位継承者とするのは、あまりに惨いことではないか。こういうと必ず、もともと天皇や皇族方は国民の権利を奪われており、一般市民の自由はない身分である云々と言い出すひとがおられるだろう。しかし、それは愛子内親王殿下を皇位につけようとするから生じることであって、はなから継承資格者を男子皇胤に限定しておけば、かような苦悩を抱かせることはないのである。話を逆にしてはならない。
結論をいえば、男系女性天皇に生涯独身を強制するのでないかぎり、(ご結婚できたとして)女性天皇の皇子皇女に皇位を継がせるべきである。それは女系天皇の誕生となるから、男系維持のためにはそもそも「女性天皇」は否定されねばならない。以上である。