女帝は不要

八木秀次は『本当に女帝を認めていいのか』より前の『女帝容認論を排す』では養子論を第一に推しており、また女帝(愛子内親王殿下即位)を摂位として認めていたことも分かった。その後考えに変化があったかどうかはフォローできていない。これについては、また後日。
それにしてもあらためてネット上では私のような女性天皇も絶対反対という意見は非常に少ないと感じる。私が不思議なのは、女系反対女性容認論の方は、愛子内親王殿下のご結婚についていかに考えているかだ。歴代女帝は未亡人か独身であるから、伝統によれば愛子天皇は生涯独身でなければならない。なぜかそう主張する方は見られないから、みな愛子内親王殿下のご結婚に賛成なのだろう。そのとき、日本の歴史上絶無の男子皇配(プリンス・コンソート)の問題が生ずるが、いったいそれをどうやって処理するつもりなのだろう。配偶者を見つけることすら、そんなに簡単ではあるまい。それについて明確な答えのない限り、愛子内親王殿下の未来に対してあまりに無責任なのではないかと私は思う。
まとめると、女系天皇反対の方々は、多かれ少なかれ「伝統」に反するがゆえに、そのことに反対なのであるが、愛子天皇を認めると、
①結婚している女帝
②男子皇配の存在
③中継ぎではない女帝
という、少なくとも三つの「伝統」違反が生じる。女系反対女性容認の方々は自らの「伝統」主義との矛盾を感じないのだろうか? ③は少し微妙なのではあるが、私には愛子内親王殿下のご即位のどこが摂位なのかがわからぬので、加えてみた。旧皇族方を復帰させ、旧皇室典範以来の皇位継承順位を付与すれば、中継ぎを入れることなく速やかに男系男子が継承できる。幼少で即位される場合は摂政を置けばよい(摂政は女性でも問題ないと思う)。愛子天皇が誕生したとして、いったい何の「中継ぎ」をしていることになるのだろう。わからない。
私は別に男系維持派内の女性天皇容認派と喧嘩するつもりはない。共闘する用意があることは既に述べた。これらは率直な疑問なのである。
ところで、それならば「旧皇族」復帰案も伝統違反では、という声が起こりそうであるが、臣籍降下したひとが天皇になった例は存在するし、「旧皇族」の皇籍離脱は、あくまで占領期という主権喪失化における出来事でありイレギュラーである、と答えうる。はっきりいえば、旧皇族皇籍離脱は法的に無効である。そもそも女帝を認めたとしても、男系維持を原則とするかぎり、その皇子皇女は天皇になれないのだから、いずれ旧皇族方に皇位を移すしかないので、あえて女性天皇を立てるという遠回りをする必要はまったくないはずなのだ。これは(私は反対だが)旧皇族からの養子案を採用しても同様である。
そういうわけで私としては、女性天皇は不要であると断じざるをえない。
私の疑問に対して、「女性天皇」容認の方がもし「世論が愛子天皇を望んでいるから」という回答をするならば、「では、女系天皇を世論が望むなら(実際支持率は非常に高い)、愛子天皇の皇子皇女が皇位継承するのに賛成なのですか?」と反問するのみである。