映画

陰日向に咲く――安田真奈監督『幸福のスイッチ』★★★★

地味な映画である。地方の小さな電気店を舞台に、父娘の確執を描く。人間ドラマだが、壮絶な場面はまったくない。むしろ、家族間の等身大のリアルなぶつかり合いが見られる。 あくまで日常的目線で徹底しているが、セリフや演出、小道具など、細かい所に気を…

仏作って魂入れず――本広克行監督『サマータイムマシーンブルース』★★

私の在住地出身監督による、在住地周辺を舞台にした映画。映像は、実景なのに人工的に見え、非常に美しい。 ストーリーはタイトル通り、SF仕立ての時間旅行もの。SF研究会部室のクーラーのリモコンが壊れてしまい、たまたま見つけたタイムマシーンに乗っ…

重いが後味良し――生野慈朗監督『手紙』★★★★★

よかった。何より、主人公武島直貴役山田孝之が素晴らしい。誤って殺人を犯して終身服役中の兄を持つという境遇から人との接触を控えて生活するという「静」と、幼馴染とコンビを組んでお笑い芸人として舞台に上がる「動」、という両面性を持つ難しい役所だ…

世界に中心なんてない――行定勲監督『世界の中心で、愛を叫ぶ』★

『クローズド・ノート』で免疫がついたので、とうとう見てしまった。昭和レトロ感を漂わすひなびた漁村として庵治町を美しく描いていて、県民としてはうれしい限り。大林宣彦の尾道のような原風景になっている。 中身はどうか。白血病で早世する少女(亜紀)…

行定勲監督『クローズド・ノート』

というわけで昨日4日、宇多津のワーナーブラザーズのシネコンに行ってきた。ここは初めて。八つの映写室が集まっていて、一つ一つは比較的小規模。しかも平日の昼間だったので、客は女性三人組と私だけだった。 数年前香川に越してきてからついぞ映画館にな…

WXIII 機動警察パトレイバー

たしかに絵はきれいだが、2(押井守監督)の息つく暇のないテンポに比べたらスロー。ストーリーは原作の一部が元だが、悲劇の天才女性科学者岬冴子を中心に構成されていて、原作においてはあえて行間に埋めて隠したエピソードだ。要するにパトレイバーじゃ…