世界に中心なんてない――行定勲監督『世界の中心で、愛を叫ぶ』★
『クローズド・ノート』で免疫がついたので、とうとう見てしまった。昭和レトロ感を漂わすひなびた漁村として庵治町を美しく描いていて、県民としてはうれしい限り。大林宣彦の尾道のような原風景になっている。
中身はどうか。白血病で早世する少女(亜紀)という設定はまあいい。しかし、クリーンルームで治療期間中の患者を外に出し、あまつさえ海外に連れて行こうとするのは、いくらフィクションでも無茶苦茶ではあるまいか。しかもその際、亜紀はマスクすらしていない。どうもこのあたりで我慢ができなくなった。
また、ああいうオチにするならば、朔太郎と律子の現代での関係性を最初の方でもう少ししっかり描くべきだったのではなかろうか。私にはラスト付近がかなり唐突な展開に思えた。
総じて、描きたい絵をつなぎ合わせただけで、全体としての緊密感を欠いたぬるい自主フィルムの臭いが抜けていないと思う。どうしたいのかはわかるが、できあがりがそこに至っていない。