陰日向に咲く――安田真奈監督『幸福のスイッチ』★★★★

kanedaitsuki2008-01-29

地味な映画である。地方の小さな電気店を舞台に、父娘の確執を描く。人間ドラマだが、壮絶な場面はまったくない。むしろ、家族間の等身大のリアルなぶつかり合いが見られる。
あくまで日常的目線で徹底しているが、セリフや演出、小道具など、細かい所に気を配っていることが分かる。したがって、繰り返し鑑賞できる味わいがある。小津安二郎とまで言うと大げさだが、新人監督ながら、ある意味日本映画の王道を歩んでいる。
主演の上野樹里は、三人姉妹中、ひとり頑固な父親(沢田研二)に反抗する自尊心の強い女性を好演。「のだめカンタービレ」などではうかがい知れない演技達者ぶりを見せている。人気知名度に関して、長澤、沢尻に先を越されているが、その一方、はるかに息長く女優業を続けることのできる資質と能力を持っているようだ。もっと各所で推薦されていい映画だと思う。

幸福のスイッチ