父からか、父と子からか、それが問題だ――Joseph P. Farrell trans."The Mystagogy of the Holy Spirit"★★★★★

 フィリオクエ論争において、東方教会側の立場を代表する聖フォティオスの論文の翻訳。
 ファレルの解説が素晴らしい。西方教会(ラテン教会)への、アウグスティヌスを介したギリシャ的思考(ネオ・プラトニズム)の抜きがたい影響が、フィリオクエ付加に至る神学を形成したと指摘し、非常に新鮮な視角を提供している。
 西方キリスト教会の思考の強い影響下にある国々の人は、フィリオクエ論争を単に言葉尻の問題ととらえがちである。実際、日本で普及している『岩波 キリスト教辞典』の「フィリオクエ」項では、東西に「大きな違いはない」と記述している。
 真にエキュメニカルな対話のためには、まず率直に違いを認めることからはじめるべきである。その意味で、このフィリオクエ論争に関する基本文献は、東西両方にとって欠かせない一書と言えよう。