靖国問題に一石も投ぜず――上坂冬子『戦争を知らない人のための靖国問題』★

薄っぺらい本。特に前半に顕著だが、著者の主観が強すぎ、非常に情緒的に思えるところが少なくない。また、靖国神社の今後について、神道色を排して改組すべきという主張にもまったく頷けない。神道という枠組みを亡くせば靖国神社の歴史的連続性が断たれてしまうではないか。
ただ、取り上げるべき点もなくはない。たとえば十一条にくらべて言及される機会の少ないサンフランシスコ講和条約第二十五条に触れているのは目を引く。二十五条では、条約署名国もしくは批准国以外は、この条約についてのいかなる権利・権限・利益も与えないと明言されているのだ。申すまでもなく、韓国も中国もこの条約の署名国でも批准国でもない。とはいえ、この事実をつきつけても中韓の態度に変化はあるまい。せいぜい、この条約を持ち出して靖国参拝批判する輩の足をすくうくらいが関の山ではあろう。
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