伊坂幸太郎『魔王』★★★

kanedaitsuki2006-01-06

カリスマ的政治家が人心を掌握しつつある中、大きな流れに抗しようとした、特殊な能力を持つ兄弟の物語。前編が兄、後編が弟を中心としているが、いつものようなザッピング構造はなく、単線的である。
ファシズムがテーマにあらず、とご本人も言っているが、あまり社会批評として熟しているとは言えない。参考文献も正直しょぼい。伊坂の社会や政治に対する態度は、春樹チルドレンらしく距離を置いた感じだ。ただ、ファシズム宮沢賢治の詩を結びつけているところは、やはりセンスがあると思う。
全体的にあっさりしすぎている。それぞれ好短編なのだろうが、つなげて長編と考えると物足りなかった。
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