初心に帰ってみたりして

去年今年脳の右側左側 一輝

旧作。玄人受けした句。季語は去年今年(こぞことし)で、「たちまちのうちに年去り年来るという、時の歩みの速さに深い感慨を覚えることば」(角川歳時記第三版)。いわゆる典型的な二物配合(異質なものの組み合わせ)なのだが、俳句をある程度していても理解できないひとがいるようだ。
俳句になじんでいる方はすぐぴんとくるはずだが、「去年今年貫く棒の如きもの 虚子」という句が背景にある。つまり、右脳と左脳をつなぐものを暗示しているわけ。そこまで想到しないとわからないらしい。
これを作っていた当時の私の俳句の理想として、ミニマルアートのような「手触り感のある抽象美」というものがあって、その点で虚子の掲句はモデルとしてあった。この句を得て、ある種自分の行くべき道を実践的に切り開いた気がした。