国体に対する疑惑

『萬世一系の天皇』を休んで里見岸雄『国体に対する疑惑』を読みふける。すでに述べたように里見は、やたらに神秘化したような国体論(天皇論)を批判して、諄々と理性的なアポロジーを展開している。しかし、読んでいて違和感を覚えるところもある。私は渡辺昇一説に従い、国体=Constituteと解していたが、里見の「国体」はそれを超えて、神武建国の理想を体した普遍的な道徳理念を意味している。また、里見は天皇の本義を「道徳的指導者」とみなしている。三種の神器がそれを象徴している。正否を問うだけの知識はないが(というよりも、はっきり間違いだ、というつもりは毛頭ない)、正直飲み込みにくい。どうも里見は、いわゆる「保守主義」的基準を採用しているのではなく、おそらく日蓮主義に基づく独自の理論的根拠があるようだ。この点は私自身の研究課題としておきたい。