伊藤正徳『帝国陸軍の最後』全5巻

全5巻のまだ半分ほどしか読んでないが。
将兵いかに戦いしか、という点にこだわり、臨場感あふれる筆致で描いている。個々の戦いについてもほどほどに詳しく、非常に読みやすい大東亜戦争通史として、分量的にも手ごろだと思う。
緒戦の勝利は、多くの偶然によって支えられていることもさることながら、もともと連合軍側には「死守」する気があまりなく、時機を見て準備を整えて反撃する腹づもりだったことも、破竹の勢いを許した理由のひとつなのだということがわかってきた。たしかにそのことで、長年欧米の植民地支配に苦しんできた現地民に、独立の精神を涵養したことは間違いなく、マクロ的に見て日本にとって利がなかったとは言えないが。
ガダルカナル戦はいろいろな意味で教訓的な戦闘なので、知らぬひとは是非その部分だけでも読むべきだ。当時の陸海軍の戦争目的の不一致や、兵站の軽視(攻勢終末点外での戦闘)などなど日本軍の弱点がもろに出ている。ただ、当時の軍部が徹頭徹尾非合理だったともいえず、可能な場合はスタンダードなやり方(たとえば制空権を得たうえでの上陸作戦)をとってはいる。つまるところ、国力といった純物理的な制約から、奇襲戦法や決死戦法をとらざるをえなかった(特攻もその延長にある)というのが実情だ。それをして「無謀」ととるか、「敢闘」ととるかは、あくまで主観的な問題であろう。
いったん戦争を起こしたからには、戦い抜くしかなかったのだ、と私は静かに思念している。
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