タッチアンドムーブ

加藤九段が銀河戦で待ったをして同棋戦の出場停止と罰金をくらった。この処分は当然だ。
思うに将棋にもチェス式のタッチアンドムーブ(触ったらその駒を必ず動かす)を課したほうがいいのではなかろうか。現在将棋では、駒を動かしても手を離さなければ着手とみなされないことになっている。たとえばある駒をどこかに実際に動かしても、手を離さずにもとに戻せば、その手はなかったことになる。将棋やチェスをやるひとならおわかりの通り、頭の中だけで駒を動かすのと、実際に駒を動かすのでは読みの深さに差が出てくる。将棋の場合、やろうと思えば駒を動かして思考できるわけだ。実際のところ、指しかけてその手をやめる、というのは、その瞬間に悪手と判断してのことであることも稀ではあるまい。頭脳スポーツなのだから、読みは純粋に頭脳の中だけのものでなくてはならないのではないか? タッチアンドムーブをプロに義務づければ、しろうと間にも、事実上の「待った」を抑止する効果が出てくるだろうし。
秒読み問題についても同様、対局者自身でチェスクロックを押すスタイルにすればすっきりする(奨励会などではしている)。現在のシステムだと、秒を読む係である奨励会員や低段者からすれば、対局している棋士は大先輩である。公正中立な審判役をやらせるのは酷な話で、これまで加藤九段の不正行為がうやむやになっていたのはそのせいでもある。
なんでもチェスがいいというつもりは毛頭ないが、この件についてはチェスに見習うのが懸命だと思う。