津村記久子『ポトスライムの舟』★★★★

kanedaitsuki2009-02-12

 二編集録だが第140回芥川賞受賞作のみ読了。
 主人公は30前の独身女性で、契約社員として工場で働いているが、「生きさせろ!」的な社会問題は出てこない。工場の一年間の収入とほぼ同額の世界一周ツアーに漠然と行きたいと思いながら、日々を過ごしている。
 波風の大きな事件は起こらないが、結婚している知人が娘を連れて家出し居候生活をはじめたのが、ちょっとした出来事だ。過労の為倒れた主人公が、一週間ほど自宅休養して仕事から解放され、ほどなく知人も引越を果たして話は終わる。
 地味だが、良いものを読んだなと感じさせる佳作だ。だがなぜ芥川賞なのかは良く分からない。


ポトスライムの舟