下品極まりない反キリスト教本――中丸明『聖母マリア伝承』★

kanedaitsuki2008-08-11


以下はアマゾンレビューに送信するもはじかれてしまった記事である。


キリスト教への無知と偏見だらけ, 2008/8/11


By kanedaitsuki - レビューをすべて見る

知的良心が感じられない。
目につくところでは、いささかの粉飾を加えているとはいえ、何のことわりもなく竹下節子の同類書『聖母マリア <異端>から<女王>へ』(pp119-120)をまる写ししている箇所がある(p136)。こういうのは著作権侵害にならないのだろうか。
第二章「処女懐胎の謎」においては、バーバラ・スィーリング「イエスのミステリー」(NHK出版/高尾利数訳)をもっともらしく担ぎ出しているが、これは数あるキリスト教トンデモ本の一つであり、学会ではほとんどまともに扱われていない。少なくとも批判者がいることくらいは踏まえておくべきだろう。
キリスト教の教義の理解となると、どうしようもない。

「宗教界のチャンピオンになることを心に誓った使徒たちは、ここで「三位一体」trinidadーーすなわち、「父なる神、神の子、聖霊」は本来同一のものであって、時と場合によって現れかたが異なるだけという、常人にはとうてい理解できないような摩訶不思議な教義をひねくり出して、大工の子イエスを、預言者から神へ仕立てあげてしまった。」p132

「時と場合によって現れかたが異なるだけ」という言い方は、むしろサベリウス異端(様態論的モナルキア主義)の説であり、三位一体についての正統教義では決してない。カトリックであれプロテスタントであれ、こんな三位一体の説明を聞かされたら吃驚仰天だろう。なぜ、教義解説書を紐解くなどの労をとらなかったのか。
キリスト教批判をするならするでよい。しかし、その際はできるだけ対象を正確に把握することが不可欠だろう。通俗的イメージを元に悪態をついたところで、それは風車に突撃するドンキホーテにしかならない。

聖母マリア伝承 (文春新書)