チェスタートン『正統』より

おそらく既にどこかで言及されていると思うが引いてみる。

想像力から狂気は生まれない。狂気が生まれるのは間違いなく理性からである。詩人は狂わない。チェスプレイヤーは狂う。数学者は狂う。銀行員も狂う。創造的な芸術家はほとんど狂わない。あとで見るように、いかなる意味でも私は論理を攻撃しているのではない。私はただ、狂気の危険は想像力ではなく論理に存すると言っているだけである。(・・・)ポーは全くの病気だったが、それは彼が詩的だったからではなく、彼がとりわけ分析的だったからだ。チェスでさえ彼には詩的すぎた。彼はチェスが嫌いだった。馬や城がいっぱいで、まるで詩のようだったからだ。

芸術と狂気の相関性を考える人は違和感を持つ論述かも知れないが、チェスタートンは極度にひねった言い方を好むこと、また、有名な「狂人は理性を失った人ではない。狂人は理性以外の全てを失った人である」という文言を考慮に入れて読んでいただければ幸いである。

Orthodoxy