NHK杯 谷川浩司九段―佐藤康光棋聖戦

相振り向かい飛車対三間飛車。谷川が手損して交換した角を6六の好位置に据えたのに対し、佐藤は玉を5二と中住まいにして六筋から突如攻撃開始。銀当りの5五角打ちが強引に見えたが、駒損なく谷川の角を拠点から消すことに成功。佐藤はさらに谷川の8四歩の手筋の歩突きに手抜いて攻めを続ける。一端落ち着いたかと思える局面、谷川の2六歩の桂取りに対し、2一の飛車を7一に転換、使いづらかった飛車が世に出て、ここで勝負は決した。投了図は相手が天下の谷川とは思えぬ程の大差になった。
まるで漫画で無理から作り上げたフィクションのような将棋だ。佐藤のimaginationの豊かさに舌を巻いた。かつて先崎学八段は、佐藤の棋風は「緻密流」とされているが、実際は無理気味の攻めを好むタイプだと喝破したが、その特徴が存分に発揮された一局である。