008 答え

48...f4
先制パンチを繰り出します。Qxh4は許せないので、やむなく49 exf4ですが、49...Rxd4 50 Rxd4 cxd4で、中央に強力なパスポーンを一方的に作った黒が圧倒的に優勢です。

さて、チェスに詳しくない方のための解説。
まずポーンの基本ルールから。ポーンは将棋でいう歩と同じで前に一枡のみ進む最弱の駒ですが、歩と違う特性が三つほどあります。
一つ目。オープニングポジションにあるポーン、すなわち、ゲーム開始から一度も動いていないポーンは、前に駒がないかぎり、一度に二枡進んでもかまいません。もちろん一枡だけでもいいですが、一度動いたら、この権利は失われます。
二つ目。進むときは前の枡ですが、相手の駒を取るときは、斜め前に動きます。つまり、ポーンの「利き」は斜め前の二枡ということになります。
三つ目。ポーンが盤の端(バックランクといいます)まで到達したら、ポーン以外のどの駒にでもなることができます。将棋でいう「成り」です。チェスではこれを「プロモーション」といい、通常は最強の駒であるクイーン(飛車+角行)になります。
三つ目の特性に注目してください。最弱で価値の低いとされるポーンですが、生き延びて盤の端まで進むことができたならば、最強の駒になるわけです。すなわちポーンは「潜在的なクイーン」なのです。将棋と違ってチェスでは一度取られた駒は二度と盤上に戻ってきませんから、ゲームの進行とともに駒数は減っていきます。それゆえポーンの価値はゲームが進むのに比例して上がります。また、ポーンは進んでいればいるほどプロモーションに近づいているわけですから、盤端に近づけば近づくほど、やはりポーンの価値は上がります。
「パスポーン」とは、両隣の行(ファイルといいます)に敵ポーンがいないポーンを言います。上の問題でいえば、黒50手目の終わった時点でのdポーンが「パスポーン」となります。ポーンによって進行を妨げることができないので、ピースのいくつかを防衛に使わざるを得ず、その行動が制約されます。実際に動かないでも、相手にとっては「パスポーン」の存在そのものが脅威となるわけです。ポーンが「潜在的なクイーン」であることがわかれば、「パスポーン」がいかに高い価値を持つかはすぐ了解できることでしょう。
初級から中級に進む過程で、このようなポーンの価値を把握することは非常に重要なステップとなるでしょう。この問題のようなパスポーンをつくる手筋は、参考になるかと思います。