長子優先は事実上の「王朝交代」となる

皇室典範に関する有識者会議の結論が出た。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051121-00000103-mai-soci

皇室典範会議>皇位継承順位で長子優先を全会一致で確認

 小泉純一郎首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之東京大学長)は21日、東京都内のホテルで第16回会合を開き、最終報告書の全容を固めた。女性・女系天皇の容認を決めた後、課題として残っていた皇位継承順位について、直系優先のうえで出生順に定める「長子優先」とすることを全会一致で確認。皇族の範囲に関しては、天皇との世数を限定しない現行の「永世皇族制」の維持を打ち出す一方、女性皇族が宮家を創設することを認めた。
 有識者会議は24日、首相に最終報告書を提出する。これを受け、政府は来年の通常国会での皇室典範改正を目指す。最終報告書の方向になれば、皇太子ご夫妻の長女敬宮愛子さまが、皇太子さまに続く皇位継承順位2位になる。
 有識者会議は10月25日の第14回会合で、女性・女系天皇の容認で一致。その後、皇位継承順位をめぐっては、直系優先を前提に「長子優先」と「兄弟姉妹間で男子優先」の2案にしぼって議論を進めてきた。
 長子優先での決着について、吉川座長は会合後の記者会見で「国民が(皇位継承者を)将来の天皇として成長を見守ることができる。分かりやすくかつ安定した制度だ」と説明。兄弟姉妹間男子優先に対しては「男子の誕生を待つ不確定な時間が長く、好ましくない」と語り、安定性を重視した結果だと強調した。
 皇族の範囲では、女性・女系天皇を認めた場合、将来的に皇族の数がかなり増えることも指摘された。しかし、最終的には、皇位継承資格者を安定的に確保するためには世数限定は好ましくないとの考えに集約された。
 女性皇族の中で「内親王」は、男性皇族の「親王」と同じ処遇とすることで一致。現行の皇室典範では、女性皇族は婚姻と同時に皇族の身分を離れるが、親王には「独立の生計を営む際」の宮家創設が認められている。一方、内親王親王妃を除いた女性皇族である「女王」については、意思に基づいた皇籍離脱を認めるという弾力的な運用を打ち出した。
 過去に10代8人の女性天皇が即位しているが、いずれも男系で「中継ぎ」的な要素が濃かった。女系にまで踏み込むことには政府・与党内にも異論が残っており、来年の通常国会に向け、調整は曲折も予想される。
 一方、吉川座長は会見で、寛仁親王殿下が私的なエッセーで男系男子継承を訴えたことについて議論になったことを認めたうえで「歴史観については当然議論すべきだが、国会ですべきだ」と述べた。【野口武則】

考えられる限り最悪の改正内容である。
長子優先すれば記事に書かれている通り、愛子内親王殿下が次次代の「天皇」に即位される。そして次次次代は愛子内親王殿下の第一子が皇位を継承される可能性が高い。第一子が男性であろうが女性であろうが、それは「女系天皇」である。そうなるともはや日本の歴史上かつてなかった「王朝交代」であり「易姓革命」となるのだ。
いったい、女性天皇を容認している多数派の国民は、これが完全なる国体変革になることをどれだけ理解しているのだろうか。
よく考えなければならないが、「男系男子優先」という伝統的な皇位継承ルールのような国家の根本法を、一時の国民の意志によって変更されることがあってみれば、逆にいえば、未来において、さらにまた改正議論が巻き起こり、その場合、皇位の正統性をめぐって思想的内戦状態が勃発し、日本人が分裂する事態が想定される。つまり、安易に国民の意志(この場合は立法府による多数決)で皇位継承ルールの根本を変更することは、天皇の「国民統合の象徴」機能を破壊してしまう恐れが大なのだ。だからこそ、伝統的なルールには手をくわえないことが社会の安寧秩序を守り、国民の自由を確保する際に重要なことであり、これがいわゆる「保守主義」者の立場なのである。
もちろん、現行憲法第二条では、皇室典範の国会による改正がうたわれている。しかし、本来は皇室会議その他によって決められたことを、いわば形式的に議会を通過させる、というのが立憲君主制を採用する「民主主義国」にふさわしいやり方であろう。
現在の状況はきわめて深刻で、長子優先という線での皇室典範改正が通る可能性は非常に高いと思う。かりに小泉首相が「党議拘束」をかければ、郵政問題の二の舞はふみたくない「消極的反対派」も賛成に回り、可能性はぐんと高まる。一度改正されたならば、これを逆向きに再改正しようとするのは、おそろしいほどのエネルギーが必要となろう。しかし、残念ながら、もはや時間はあまりない。