綿矢りさ『蹴りたい背中』★★★

周りに溶け込むことのできない内向的な少女の、同じくクラスで浮いた存在のにな川への言葉にならない感情を描いた好中篇。あいつのこと気になる、でもそれをひとに「恋愛感情」と呼ばれるのはうざい。うん、こういう感覚はよくわかる。あえて「蜷川」と表記しないところに、主人公の感情の綾が込められていて、うまい。ただ、こういう事件らしい事件のない話とすれば、中途半端な長さの気もする。文章を書く腕があるのはわかりすぎるくらいわかるが、構成的にもっともんでみた方がよかったのでは、と思わせるところが、いかにもデビュー2作目。余計なお世話だが、どうせ賞をあげるならこれよりはるかに面白いデビュー作『インストール』にあげるか、もう少し作品をこなしてからの方が適切だっただろう。まあ、これからのひとです。
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