殊能将之『キマイラの新しい城』★★★★★

ひさびさに小説を読んだが、めちゃめちゃおもしろかった。
テーマパーク内に移築したヨーロッパ中世の城の中での殺人。容疑者は城主の亡霊にとりつかれたテーマパークの社長。設定は凄いが、中身は軽い。正確に言うと「おもかる」といった感じか。本格ものとしての評価は微妙かな。ただ、この手の変則的なミステリは90年以降増えていて読者にも受け入れられてはいる。
ところで、ちらりと出てくるアクィナスネタにはやはりにやりとさせられる。

「知ってるかい? アリストテレスが体系化した三段論法は、中世スコラ学者の必須科目だったんだ。十九種類の三段論法を丸暗記するための覚え唄まであったくらいだ。つまり、論理学はカトリックとともに発展した。アクィナスが『天使は三段論法できる』と主張したのも当然だ。論理は神の栄光を証明するためのツールなのだから。確かに現代人の目から見ると、スコラ学者たちは『針の先で何人の天使がダンスできるか?』といった非現実的なことを議論し、証明しようとしていたかに見える。しかし、だからといって、彼らが非論理的であったとはいえない。なぜなら、論理的であるとは、構造の問題だからだ。各要素の属性を捨象し、それらの関係性だけをとりだして初めて、構造が見えてくる(…)」

天国に行くとみな天使になるぞぉとおたけぶ一方、単純な三段論法もできない自称クリスチャンもいますが・・
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