ポール・エドワーズ『輪廻体験―神話の検証』★★★

比較的めずらしい、「生まれかわり」思想に対する批判本。ただしく言うなら、思想そのものというよりも、その擬似科学性への批判である。欧米でもニューエージャーの駘蕩にともない、生まれ変わり思想が一定の影響力を持っているということなのだろう。
著者の反論はいくつかあるが、まず生まれ変わりの証拠とされる前世の記憶についての証言が信用できないということがある。それらは、前世を前提にすることなく、じゅうぶん説明可能な事例ばかりだ。そして、作者がもっとも基礎的で重要とみている反論は、「心の脳依存説」である。これは心が脳によって生み出されるという発生論的主張は含まず、ただ単に、脳なしの心は考えることができない、というより弱い主張である。数多くの観察的事実に基づくに、心の脳依存性は明白なので、生まれ変わり論者は、この説へのじゅうぶんな反論ができなければならない。なるほど、心の仕組みや発生の起源はこの説では説明できないが、そのことによってこの説の批判能力が損なわれるわけではない。
生まれかわり思想について豊富な文献を引いて紹介していて読み応えがあるが、残念ながら邦訳ではカットされているところもある。それゆえ多少文脈に難を覚えたので点は伸びなかった。
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