つなぎ遍路考

 普通にお遍路をしようと思ったら、連続30〜40日くらいの休みが必要で、仕事につく前の学生か、定年を過ぎ仕事をリタイアした人くらいしか、物理的に可能ではない。私自身もそういうイメージがあったのだが、昨今増えはじめているのが、「つなぎ遍路」。何度かにわけて、八十八ヶ所を廻り切る方法だ。これなら、仕事を放棄せずに遍路ができる。
 つなぎ遍路の増加は、瀬戸大橋をはじめ本四連絡橋が整備されことなど、四国自体へのアクセスが容易になったこととも関係があるだろう。私のように現地に在住しており、車遍路を志す人間にとっては、ETC土日祝日割引も大きい。いずれ無料化すれば、さらにその数は増えるだろう。
 家田荘子が書いているが、日常からの「逃げ」として遍路を行う人ももちろんいるが、実際遍路は日常とリンクしている。弘法大師空海は、顕教密教かは文字によるのではなく、見方によるのだと喝破した。仕事で四国に来たり、実際住んで日常生活を送る所としては、四国はただの俗なる空間に過ぎない。しかし、ひとたび遍路を行えば、まったく同じ場所が、聖なる空間になる。日常と地続きの所に非日常がある。真言密教が、このような形で開かれているのは、不思議でもあり、面白くもある。


南無大師遍照金剛