鳥の巣



鳥の巣に鳥が入つてゆくところ 波多野爽波


オリンピック中継で連日「鳥の巣」と連呼されると、どうしてもこの句を想起する。「好きな一句」に挙げる人も多い。
代表句「金魚玉とり落としなば舗道の花」のような、ビデオをスローモーションした感じがあるが、こちらはビジュアル的な華やぎもそぎ落とした究極の只事句になっている。爽波は写生原理主義者だったが、あまりの写生の徹底ぶりによって、日常的風景が非日常的なまでにデフォルメされてしまっているところが面白い。