孤高の碩学――岩下壮一『カトリックの信仰』★★★★★

kanedaitsuki2007-11-18

こういう思い入れのある本はむしろ言葉が出にくいのだが、アマゾン用にレビューを書いてみたので、ここにも採録しておく。

戦前の書ながら、日本語で書かれた教義解説書の中で、今に至るも最高峰に位置する。聖書学などで著者の見解には乗り越えられた部分も多々あろうが、しかし、基礎的な教養として知っておいても損にはならない。厳格な新スコラ主義的教育の薫陶を受けたであろう硬質な文体もまた、現在の日本では失われたに等しい曖昧さや妥協を嫌う理知の輝きを放っている。
哲学にかぶれつつも、流行のポストモダン思想にうんざりしていた学生時代の私にとって、『カトリックの信仰』は思想上のオアシスだった。著者の限界も少しは分かるようになったが、それでもなお、理性ある信仰(神秘)というカトリシズムの凄みを伝えるこの本の魅力は永遠不滅である。

カトリックの信仰 (講談社学術文庫 (1131))