本格ミステリのような味わい――E. L. Konigsburg "From the Mixed-Up Files of Mrs. Basil E. Frankweiler"★★★

kanedaitsuki2007-07-22

1969年ニューベリー賞受賞作。言わずもがなの作品ではある。
弟ジェイミーを引き連れて、退屈な日常を抜け出したクローディア。二人は仮の住処をメトロポリタン美術館に定めた。夜の見回りをやり過ごし、展示してある大ベッドで寝たり、食堂の噴水で入浴したりと、家出ライフを満喫する。そんな中、クローディアは連日来場者を集めつつあった展示品である天使像に魅せられ、いろいろ調べていくうちに二人はあることに気づく。その探索の行方は意外な結末を迎える・・。
構成がやや複雑だ。タイトルから推察されるように、この本自体がフランクワイラー女史が顧問弁護士に送ったレポートという体裁になっており、その内に、さらに手紙や記事などが挿入されている。ついには筆者自身も登場する。たしかにこういう構成でなくてはならなかったのだ。最後がやや説教めいているようにも思えるし、ありていに言えば自分探しの旅なのだが、一人称でないので弛緩せずに済んでいるのだろう。また、文章が素晴らしく、熟読に値する。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/0689711816/503-5734487-5319958

「E.L.カニグスバーグをめぐる冒険」は岩波訳の諸問題(この本ではないが)について探究されていて貴重である。一読をすすめたい。