児童向け条理文学――Louis Sacher "Holes"★★★
身に覚えのない罪を負ったスタンリー少年は、荒地につくられた更生施設に送られる。そこで待っていたのは、炎天下、毎日シャベル大の穴を掘るという作業。人格形成のために、と言われるが、実は更生施設の女長官がそこで何かを探しているのだった。
スタンリーはここでも同じグループのガキどもにいじめられるが、似た境遇の無口な少年、通称ゼロと仲良くなり、文盲の彼にアルファベットを教えたりもするようになる。ところがある事件を機にゼロは施設を脱走、逡巡の末彼を追いかけるスタンリーは、何代も続く呪いをとくべく山を登ることになる。そこで待っていたのは・・。
時折語られる過去の物語が伏線となり、ラストに収束していくところは見事。ただ、逆にいえば、永遠に続くかとも思われる不毛の穴堀りもいわば前振りでしかないし、全体にすっきりし過ぎているとも言える。
本作は1999年度ニューベリー賞受賞作、映画化もされている。