モラルなきプロフェッショナル――R.D.Wingfield "Hard Frost"★★★★

kanedaitsuki2007-06-28

フロスト警部シリーズ第四弾。邦訳は三冊目までしか出ていないようだ。
上司の上物の煙草をくすねようと、オフ中署に立ち寄ったフロストが、やむをえぬ成り行きで仕事をさせられてしまう。ゴミ袋詰めされた幼児の遺体の発見からはじまり次から次へと数珠つなぎで起きる事件。ほとんど闇雲な捜査にあけくれ失敗に次ぐ失敗。しかし、天は見捨てなかった。失敗は成功のもと。大失態にもめげず不屈の闘志でそのつど立ち上がり、最後は凶悪で冷酷な犯人をはめてしまう。
極度のヘビースモーカー、みすぼらしい身なりでとても「警部」には見えないという風体からはコロンボを想起させるが、フロストはそれよりはるかに下品でワルだ。事件も陰惨で気がめいるものが多い。しかし、ある事件以来憎まれた同僚への気配りが明かされるシーンは、フロスト警部の無私の人情が垣間見える。
それにしてもこれほど発狂しそうなほどの不眠不休をやってのけるフロストの職業倫理とは何だろう。どう考えても仕事に見合った待遇は受けていない。どちらかといえば警察官僚的なルールに従わないトラブルメイカーであり、厄介者扱いされている。何が彼を仕事の鬼にしているのか謎である。

http://www.amazon.co.jp/Hard-Frost-R-D-Wingfield/dp/0553571702/ref=sr_1_1/503-5734487-5319958?ie=UTF8&s=english-books&qid=1182992106&sr=1-1