病院 金田一輝


病室の朝はにぎやか涼新た


すさまじや体の中を流れる河


天のいと高き所も秋の雨


鶏頭の一本もなき眺めかな


刻一刻減る点滴と桐一葉


秋燈や時おりひびく音ありて


食事とう苦行ありけり穴惑


悪口をためらわず生き曼珠沙華


苦節なき三十八年鳥渡る


前世のかすかな記憶ある花野