[小説]アンナ・カヴァン『愛の渇き』★★★★

とつてもなく傲慢で孤独な女リジャイナの一生を描いた奇作。自伝的作品だが作者に比した女の娘ガーダは物語途中で亡くなる。デカダンというよりは不条理文学というべきだろう。実際のところ、このとんでもない女性に対して嫌悪感を抱くよりも、むしろ自分もまたかような存在なのかも知れないと思考は動く。自分の思いのままになる世界のみが世界であり、それゆえ実は他者がいない孤独を生きているのだと。
もちろん教訓的でもなければ道徳的な話でもない。悪を通したリアリズムは、フラナリー・オコナーに通じるところもある。