黄文雄『日本の植民地の真実』★★★

反日史観」批判の立場から書かれたこれまでの数々の著作の集大成といったところ。日本による植民地統治が、果たして巷間いわれるごとく現地人を搾取する悪逆なものだったのかどうか。
客観的に日本が植民地でしたことを列挙すると、巨大ダムや道路、鉄道などのインフラ整備、衛生管理や教育施設設置などの福利厚生、また見逃されがちだが、乱脈な経済の立て直しのための統一的な貨幣制度の導入、などだろうか。これみな、近代国家として必要なものをすべて提供したことになる。もちろんそれはまずは日本のためになされたことには違いないが、間違いなく現地人にも利益になった。なにより、これらの政策が内地からの莫大な投資によって成り立っていたことは特筆されていい。植民地政策によって搾取されていた、というなら、内地日本人こそ搾取されていたのだ。
文献リストがあるのはいいが、本文中でほとんど言及されていないのは難。これでは読者が検証するためにひどく手間がかかる。せめて章ごとに文献を集めてほしかった。
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