今週の読売俳壇

月曜発表なので遅ればせながらですが、気になる句をピックアップ。

(福田甲子雄選)
月山のふかぶかとたら芽ぶきたり 渡辺輝雄
(たら=木+勿+心)

この句の場合は、固有名「月山」がきいている。季語もよく練られており、しめの「たり」もうまい。いじいじしたとろのない堂々とした本格派の句。素晴らしい。

(宇田喜代子選)
一輪車丸ごと洗ふ春の川 曽根原幸人


(正木ゆう子選)
ぶらんこに立ちて小さな王となる 松下弘美

初学者はすぐ子供句に走りがちだ。あまったるく子供を描写したり、ひどい場合は子どものようにふるまう自分を詠んだりする。俳句には童心が必要だが、成熟した表現がともなわなければ、読者をなめたひとりよがりの句に終わる。そのあたりのことがわからないひとは、句歴にかかわらず大勢いる。
揚句はそうした欠点が見られない。ぶっきらぼうな言い回しが、読者への媚態を含んでおらず、安心して読み下せる。見習うべきだろう。